微粒子の呼吸

レジデンス成果発表展

微粒子の呼吸

トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2024 成果発表展

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、2006年よりレジデンス・プログラム「クリエーター・イン・レジデンス」を開始し、東京や海外の派遣先を舞台に、さまざまな分野で活動するアーティストたちへ滞在制作の機会を提供しています。

私たちは、自然災害や環境破壊といった地球規模の問題から、経済格差、人種や文化、思想等の相違によって生まれる非対称な権力構造による社会的問題、またこのような複雑な状況が個人の生活や精神面に及ぼす影響など、急速な変動の中で日々さまざまな課題に直面しています。この不確実な日常を生きるには、その起因を問い直すとともに、物事を転換させるための主体的な活力や知性、そして既存の枠組みや価値観に捉われない、新たな方法論を編み出す想像力/創造力を共有することが、ひとつの糸口となりうるのではないでしょうか。

今回紹介する11名のアーティストは、世界各国の都市でのレジデンス滞在をとおして、その鋭敏な感覚と多種多様なまなざしで、自身を取り巻く生態系を観察し、そこに潜むさまざまな生命の活動や創造的実践の息吹に耳を澄ませました。彼らの作品は、目の届かない場所で息づく小さなエネルギーの交換を掬い上げ、そこから形成される有機的な営みを手がかりとして、この多層的な世界の未来に向けた、共生の新たな様態を模索します。

本展の第1期では、TOKASレジデンシーに滞在した4名のアーティストがテーマ・プロジェクトとして「都市を取り巻くエコロジー」を主題に、対話や議論を重ねながら制作活動に取り組んだ成果を発表するほか、海外からの招聘作家2名の作品を展示します。第2期では、日本から海外の提携機関に派遣された作家5名が、それぞれのレジデンスでの滞在制作の成果を発表します。 

開催概要

タイトルトーキョーアーツアンドスペースレジデンス2024 成果発表展 「微粒子の呼吸」
会 期第1期:2024年6月29日(土) - 2024年8月4日(日)
第2期:2024年8月17日(土) - 2024年9月22日(日)
時 間11:00-19:00
休館日月曜日(7/15、9/16は開館)、7/16、9/17
会 場
トーキョーアーツアンドスペース本郷
入場料無料
アーティスト第1期:エド・カー、キム・ウジン、ネストール・シレ、前田耕平、松本美枝子、エドウィン・ロウ
第2期:大野由美子、谷崎桃子、辻󠄀梨絵子、仲本拡史、西 毅徳
主 催公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース
提携機関アトリエ・モンディアル(スイス、バーゼル)、エディンバラ・スカルプチャー・ワークショップ(スコットランド、エディンバラ)、HIAP[ヘルシンキ・インターナショナル・アーティスト・プログラム]、フィンランド文化財団(フィンランド、ヘルシンキ)、センター・クラーク、ケベック・アーツカウンシル(カナダ、ケベック州[モントリオール])、トレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジ、アーティスト・イン・レジデンス台北(台湾、台北)

第1期:2024年6月29日 (土) - 8月4日 (日)

テーマ・プロジェクト「都市を取り巻くエコロジー」

TOKASレジデンシーに滞在したさまざまなバックグラウンドをもつ4名のアーティストが、「都市を取り巻くエコロジー」を共通のテーマとして、議論や意見交換をしながら制作を行いました。 多様なアイデンティティが交差する都市・東京において、自然と社会と人との関係性や、経済とエコロジーの均衡や課題等を多面的に考察しました。

《FOX TOOTH》2023 

エド・カー | Edd CARR

海外クリエーター招聘プログラム 
滞在期間:2023.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー

環境に配慮した持続可能な写真プロセスを映像制作に応用し、生態系の危機と人間以外の世界との関係を描き出すカーは、キツネにまつわる神話に焦点を当て、現代の日本におけるアニミズムについてリサーチを行いました。本展では、東京の路上で見つけたヨモギなどの採集素材を用いた映像や、写真、彫刻作品をとおして、21世紀における架空のキツネ崇拝の物語を創出します。

《Performance 1(江戸川河口)》2023  Photo: Toma Yamasaki 

前田耕平|MAEDA Kohei

国内クリエーター制作交流プログラム
滞在期間:2023.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー

「自然と人の関係や距離」をテーマに活動する前田は、TOKASレジデンシー周辺の人工運河を起点に手漕ぎ舟で川の中に入り、千葉の江戸川河口から、荒川、隅田川、神田川を経て、井の頭公園までの約50kmを遡上し、リサーチを行いました。本展では、その行為の過程と考察によってたどった都市河川の環境や歴史的背景を語る映像作品を軸とした装置を展開し、自身の「東京遡上体験」を再現することを試みます。

《自分の墓を見る》2022 
 

松本美枝子|MATSUMOTO Mieko

国内クリエーター制作交流プログラム
滞在期間:2023.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー

地質や地形などの自然環境を、社会の基盤のひとつとして捉え、風景がもつ政治性、社会性に関心をもつ松本は、都市の河川と地形をリサーチし、水資源と治水、歴史的な災害や戦争の側面から、都市のありようを考察しました。本展では、写真作品や映像によるインスタレーションをとおして、近現代における地形や河川の社会的な力や、地形のなかで翻弄されてきた民衆の歴史をひとつの生態系として可視化します。

助成:公益財団法人 野村財団

《In Searching for the Individuations of Technological Thinking》2024

エドウィン・ロウEdwin LO

海外クリエーター招聘プログラム
滞在期間:2023.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー

ロウは、地域固有の「技術(テクノロジー)」が、生態系を考える上で果たす役割の重要性を考察し、江戸中期〜後期に日本・中国・西洋の異文化の交錯によって発展した、日本の軍事面や医学面などにおける技術思想の継承と個別化について探索しました。本展では、思索的で実験的なビデオ・エッセイによって、技術の来歴と、歴史における技術思想の役割の再構築を試みます。

  


《Korean Dictation Test_You Will Have to Answer the Questions You Hear》 2019

キム・ウジン|KIM Woojin

海外クリエーター招聘プログラム
滞在期間:2024.1–3
滞在場所:TOKASレジデンシー

社会的な枠組みを作り出す装置としての言語に取り組み、消滅しつつある言語に関する個人の記憶を収集するキムは、二度の世界大戦を経て、とりわけ多くの言語が失われたアジアに関心を寄せ、日本における少数言語や日本語政策の変遷について調査を行いました。本展では、日本の危機言語であるアイヌ語とうちなーぐち(沖縄語)に関するインタビューをもとに、演劇の構造を用いた映像作品を発表します。


《PC Gamer [GOMA]_TOKIO》2024

ネストール・シレ|Nestor SIRÉ

海外クリエーター招聘プログラム
滞在期間:2024.1–3
滞在場所:TOKASレジデンシー

革新的な地域的実践と創造性の多様な社会的表象を掘り下げる継続的なリサーチ・プロジェクト「CubaCreativa」を行うシレは、日本における社会的創造性や革新的な実践に関する2つの概念「珍道具」と「裏技」を探究しました。本展では、Tokyo Hacker Space と協働制作した、NFTを使用したパソコンの3Dプロトタイプや、ラテンアメリカのゲーム・コミュニティーから着想を得て開発したタイヤ型のパソコンのモジュラー版などを展開します。

第2期:2024年8月17日 (土) - 9月22日 (日)

《Nebula》2024 

大野由美子|ONO Yumiko

二国間交流事業プログラム<エディンバラ> 
滞在期間:2023.4–6
滞在場所:エディンバラ・スカルプチャー・ワークショップ

陶芸、紙など非建築的な素材を用いて架空の建築物をつくり、近年サイズ可変の作品の可能性を模索する大野は、滞在先のエディンバラでブルータリズム建築の調査をし、同一素材を用いて、レイアウトや構造の形状を変化させる実験を行いました。本展では、その発展形として新たにアメリカのブルータリズム建築を参考に制作した構造物を展開し、その構造体を展示室という建築物に接続させることを試みます。

《Ice storm》2023  Photo: Paul Litherland

谷崎桃子|TANIZAKI Momoko

二国間交流事業プログラム<ケベック>
滞在期間:2023.4–6
滞在場所:センター・クラーク

近年、不眠や精神的な不調の病理や共存について関心をもつ谷崎は、医療やメンタルヘルス・リテラシーの面で日本との差があるカナダで、精神的不調を抱える人のコミュニティを訪れ、不調との共存方法について考察しました。本展では、そのような一見ネガティブな事象や非効率的な時間を肯定的に捉えながら、カナダ滞在中に経験した不便な状況や、その時の感情をもとに制作した絵画を中心としたインスタレーションを立ち上げます。

《つながりについての雑談(ゴッドペアレント、 ルームシェア、名付け)》 2023

辻󠄀梨絵子|TSUJI Rieko

二国間交流事業プログラム<バーゼル>
滞在期間:2023.4–6
滞在場所:アトリエ・モンディアル

他者とのコミュニケーションや、公と私の境界について、横断的な表現手法を用いて活動している辻󠄀は、スイスのキリスト教文化圏に存在する「ゴッドペアレント」制度や、「ルームシェア」や「名付け」を通じた人々のコミュニティの築き方についてリサーチを行いました。本展では、思考・対話の場としてのインスタレーションをとおして、血のつながりのない家族関係や、友人同士の特別な結びつきについて問いかけます。

《唱歌的蝸牛/Singing Snail》2023 Photo: Treasure Hill Artist Village

仲本拡史|NAKAMOTO Hirofumi

二国間交流事業プログラム<台北>
滞在期間:2023.10–12
滞在場所:トレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジ

土地へのリサーチにもとづいて映画・映像の制作を行い、撮影者と世界が相互に影響し合う、カメラを中心としたネットワークを構築してきた仲本は、台湾の動植物の生態や、民話、歴史、またビデオ・アートなど現代美術の動向をリサーチしました。本展では、滞在先のトレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジに生息するカタツムリをとおして、自身が幼少期を過ごしたミャンマーでの思い出と、台湾のカタツムリの歴史を繋ぐ映像作品を発表します。

《Koive》 2023

西 毅徳|NISHI Takatoku

二国間交流事業プログラム<ヘルシンキ>
滞在期間:2023.8–11
滞在場所:HIAP[ヘルシンキ・インターナショナル・アーティスト・プログラム]

常に移り変わる自然の生み出す光景に惹かれ、そこに秘められた光学現象を、素材と構造によって再構築することで、新たな光の空間を創造する西は、フィンランドで自然光を巧みに取り入れて設計された特徴的な建築と、その自然環境との関係を調査しました。本展では、フィンランドの日常的な風景に存在する白樺に着目し、その葉がみせる多様な表情をインスタレーションによって表現します。

関連イベント

第1期:アーティスト・トーク 1
日時2024年6月30日(日) 15:00-16:30
出演エド・カー、前田耕平、松本美枝子、エドウィン・ロウ 
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料
言語日英逐次通訳

※日程及び参加アーティストは変更となる場合があります。

第1期:アーティスト・トーク 2
日時2024年7月6日(土) 15:00-16:00
出演キム・ウジン、ネストール・シレ
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料
言語日英逐次通訳

※日程及び参加アーティストは変更となる場合があります。


第2期:アーティスト・トーク 1
日時2024年8月18日(日) 15:00-16:30
出演大野由美子、谷崎桃子、辻󠄀梨絵子
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料

※日程及び参加アーティストは変更となる場合があります。

第2期:アーティスト・トーク 2
日時2024年9月7日(土) 15:00-16:00
出演仲本拡史、西 毅徳
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料

※日程及び参加アーティストは変更となる場合があります。


参加クリエーター

大野由美子
松本美枝子
西 毅徳
仲本拡史
エド・カー
キム・ウジン
エドウィン・ロウ
前田耕平
ネストール・シレ
谷崎桃子
辻󠄀 梨絵子

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