トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2026 成果発表展

本展では、2025年度に東京や世界各国の提携機関のレジデンスに滞在した国内外のアーティストたちが、その成果を発表します。第1期は、「テクノロジーと人間のかたち」というテーマを共有してTOKASレジデンシ―で滞在制作を行った4名を含む7名が、第2期は6組の作家が同じ空間を共有して行うグループ展です。
私たちが暮らす社会では、価値基準や思考はしばしば、帰属する集団によって規定されます。それは靴を履くように、身を守り歩きやすくすると同時に、世界とのあいだに一定の距離を生み出します。本展に参加するアーティストたちは、それぞれのテーマを探究する中で、意図的あるいは必然的にその靴を脱ぎ、素足になって世界に触れ直しています。
社会的な関係を扱う彼らの実践からは、属性や役割を一度外し、個へ戻ろうとする視点が見えてきます。たとえば、異なる時代や場所に存在する誰かの思考と共鳴することや、身体の一部に目を凝らすことなどをとおして、どこの誰であるかとは別の地平で、他者と出会っています。
一方で、人間以外のものと対峙する際には、社会の靴は通用しません。人間は自然という脅威の中で生存するために群れをつくり、社会を育んできました。それでも自然に向き合う時は、ひとつの身体と感覚をもつ素足の生き物として立つほかありません。
このように彼らは自発的に、あるいは不可避的に、社会的な前提からいったん離れ、脆弱性を引き受けながら世界との距離を詰めようとしています。素足で草や岩の上を歩くとその感触の豊かさと皮膚の繊細さを再認識するように、自らの実感を手がかりに世界と関係を結び直す。それぞれの歩みが、本展においても立ち現れてくるでしょう。
| タイトル | トーキョーアーツアンドスペースレジデンス2026 成果発表展「はだしであるく」 |
|---|---|
| 会期 | [第1期]2026年6月27日(土) - 2026年8月2日(日) [第2期]2026年8月15日(土) - 2026年9月20日(日) |
| 時間 | 11:00-19:00(入場は閉館30分前まで) |
| 休館日 | 月曜日(7月20日は開館)、7月21日 |
| 会場 | トーキョーアーツアンドスペース本郷 (東京都文京区本郷2-4-16) |
| 入場料 | 無料 |
| アーティスト | 第1期:アナイス・カレニン、アレクシア・アヒレオス、池添 俊、井上拓哉、エドゥアルド・カスティーリョ・ビヌエサ、ノガミカツキ、村上 郁 第2期:宇佐美奈緒、ガン・ドンフン、Synphysica、ハラサオリ、ディエゴ・ペレス、水野 渚 |
| 主催 | トーキョーアーツアンドスペース(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 ) |
| 提携機関(都市) | アトリエ・モンディアル(スイス、バーゼル)、カリーズ(ドイツ、ベルリン)、センター・クラーク、ケベック・アーツカウンシル(カナダ、ケベック州[モントリオール])、HIAP [ヘルシンキ・インターナショナル・アーティスト・プログラム]、フィンランド文化財団(フィンランド、ヘルシンキ)、トレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジ、アーティスト・イン・レジデンス台北(台湾、台北)、ウィールズ、ベルギー・フランダース政府(ベルギー、ブリュッセル) |
テーマ・プロジェクトでは、TOKASレジデンシーに滞在した4名のアーティストが、「テクノロジーと人間のかたち」を主題に、対話や議論を重ねながら個別に制作活動に取り組みました。
テクノロジーによる人間の認識への影響やテクノロジーと社会との関係などについて、それぞれの制作や芸術的実践をとおしてどのように提示、応答しているのかを話し合い、探究の手がかりを探りました。

《Ancestralidade: planta》2023
撮影:竹久直樹
国内クリエーター制作交流プログラム <テーマ・プロジェクト>
滞在期間:2025.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー
アナイス・カレニンは、植民地時代以前から伝わる知識体系を研究し、感覚的な方法論を用いて人間と植物の関係を問い直しています。東京滞在中は、江戸時代から近代化に至る技術史を調査し、知の構築と同時に形成された薬草や鉱物に対する体系化と収奪的まなざしを考察するとともに、祖先の知と人工知能との交差点を探究しました。本展では、新植民地主義的な論理を超えて信仰と知を再編成する立体作品を発表します。

《The Fox Who Tricked the Superintelligence & Other Stories》2025-
撮影:Loucas STAVROU
海外クリエーター招聘プログラム
滞在期間:2025.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー
アヒレオスは、歴史、文化、地政学と、テクノロジーを取り巻く権力構造の関係性を研究するアーティスト、研究者です。東京滞在中には、プレイヤー同士が協働して新たな「民話」を創造し、ビッグテック企業がAIや未来について語るユートピア的「神話」に異議を唱える参加型カードゲームを制作しました。本展では、プレイされる度に各地で生まれたさまざまな物語とカードゲームを展示します。

《RAINMAKERS》2026 映像より抜粋
海外クリエーター招聘プログラム
滞在期間:2025.5–8
滞在場所:TOKASレジデンシー
建築家、リサーチャー、映像作家のカスティーリョ・ビヌエサは、気候、テクノロジー、地政学が重なる領域に着目し、空間技術と視覚文化が現代における統治のあり方や生態系の変容に与える影響を探究しています。東京での滞在中は、日本が主導し2050年までに気象の制御を目指す「ムーンショット目標8」を軸にリサーチを行いました。今回発表する映像インスタレーションでは、大気に対して観測と介入の境界がますます曖昧になりつつある現状に焦点を当てます。
助成:スペイン文化省

《Post-Body Rehearsal》2025
撮影:間庭裕基
国内クリエーター制作交流プログラム
滞在期間:2025.5–7
滞在場所:TOKASレジデンシー
ノガミはデジタル社会において、身体と記憶により形成される、オンラインとオフラインそれぞれのアイデンティティを追究しています。TOKASレジデンシー滞在中は、自身の日記をもとに翌日の日記をAIに書かせ、それに応じて生活を変えるインタラクティブな試みや、アバターとリアルな身体とのズレに着目するVRパフォーマンスを行いました。本展ではこれらのアーカイブと合わせて、自身の感情の記憶メディアとして滞在中から制作していた音楽作品を発表します。

新作映像より抜粋 2026
二都市間交流事業プログラム<ブリュッセル>
滞在期間:2025.4–6
滞在場所:ウィールズ
映画と現代美術の領域を横断して活動する池添は、社会や歴史の中で取りこぼされやすい個人の話や記憶を収集し、普遍的な物語へと再構成します。滞在先であるヘール(ベルギー)では、700年以上にわたり、精神疾患のある人々と地域住民が共に暮らす里親制度が受け継がれています。本展では、現地でのインタビューをもとに、「健常/病」をひとつの連続体として捉え直し、境界を問い直す映像インスタレーションを発表します。
助成:公益財団法人 朝日新聞文化財団

《Project “ABC”》2025
©Alexis BERNARD
二都市間交流事業プログラム<ケベック>
滞在期間:2025.4–7
滞在場所:センター・クラーク
旅で出合う風景や人々を起点に絵画制作を行い、「普遍性」の概念を探究しています。各々がイメージする「肌色」に絵具を混色してもらう参加型プロジェクトをケベックにて行った井上は、多様性を国の基盤とする文化的差異と、普遍性を問うこと自体が内包する暴力性を実感したと言います。自己の視点だけに留まらず、他者との関係性を織り込み、「私が見ていないもの」を問うように制作した絵画作品を展示します。

《のの紙(雑草紙)》テストピース 2026
二都市間交流事業プログラム<バーゼル>
滞在期間:2025.4–6
滞在場所:アトリエ・モンディアル
「散歩」と称した、直感と理論を組み合わせたリサーチを通じて、技術を介した人間と自然の関係を考察する村上は、バーゼルの紙漉きと印刷の歴史を調査し、雑草を用いた紙づくりを行いました。その過程で定期的な水換えが植物繊維の状態維持を助けたことから、自然の力と人の手による制御や管理の関係に着目しました。本展では、水の循環システムと映像を組み合わせた立体作品を中心に発表します。

《Silence and Oblivion》2025
撮影:Leonard NEUBERGER
二国間交流事業プログラム<ベルリン>
滞在期間:2025.9-11
滞在場所:カリーズ
宇佐美はフェミニズム研究にもとづき、映像やパフォーマンスのほか、ビデオゲームで他者の視点や身体感覚に迫る表現を追究しています。ベルリンでは地下壕や強制収容所などの戦争遺構を訪れ、肉体的・精神的に抑圧された⾝体をリサーチしました。本展で発表するビデオゲーム作品は、戦時中密かに執筆を続けた作家らが自らの著書の焚書に立ち会う場面をモチーフに、人間と書籍の温度を3Dコンピュータ・グラフィクス化し、追体験する機会を提供します。また、同時期に滞在した振付家・パフォーマーの小林萌が振付し、宇佐美が映像を作成したパフォーマンス作品を発表します。
助成:公益財団法人 熊谷正寿文化財団

《Binary Composition for Two Cellos》2024
撮影:Ivan MURZIN
海外クリエーター招聘プログラム <個別プロジェクト>
滞在期間:2026.1–3
滞在場所:TOKASレジデンシー
ガンは、音や音楽が歴史を通じて社会でどのように消費、誤用されてきたかを探究する、アーティスト、作曲家、研究者です。東京滞在中は、近代化の過程で東アジアへ西洋音楽が流入した影響で生じた音楽的ヒエラルキーや当時の音楽教育について、ポストコロニアル的視点から考察を深めました。300年前に西洋でメロディーが生まれ、歌詞や役割を変容させながら各地へ伝わり、現在も日韓両国でよく知られている童謡をモチーフに作品を発表します。

《Virtual Root》2021
海外クリエーター招聘プログラム <個別プロジェクト>
滞在期間:2026.1–3
滞在場所:TOKASレジデンシー
Synphysicaはアートと科学をとおして、人間と非人間的システムの相互作用について探求するコレクティブです。生体信号を可視化することで、人間の知覚を超えた環境を顕在化させ、生命の主観的な視点からその輪郭を捉えようと試みています。東京滞在中は日本庭園や森林を調査し、管理された環境と生態学的な観点の緊張関係を考察しました。本展ではこれらをもとに、実際の草木を用いて人間と自然が対話する空間を立ち上げます。

《P wave》2021
撮影:NAKAYAMA Yunosuke
二都市間交流事業プログラム<台北>
滞在期間:2025.9–11
滞在場所:トレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジ
ハラは、空間や社会に内包される「振付」的な事象へ応答するように、パフォーマンス作品を発表しています。台北では地震と人の関係をリサーチする中で、重層的に存在する軍事的緊張や情報戦などの異なる「揺れ/揺さぶり」と、全国防災訓練などの制度的反復に触れました。本展では、映像、写真、パフォーマンスをとおして「危機を記憶し、備える身体」への想像力を拡張し、災害や戦争といったあらゆるカタストロフィと身体の問題へ接続することを目指します。
助成:公益財団法人アイスタイル芸術文化財団

《Sumida fountain I》2025
撮影:間庭裕基
海外クリエーター招聘プログラム <個別プロジェクト>
滞在期間:2025.9–11
滞在場所:TOKASレジデンシー
ペレスは、素材や地域の歴史、日常生活との関係や他者との交流を起点に、絵画や写真、彫刻などさまざまな手法で制作を行います。東京滞在中は特に墨田区周辺を散策し、日々目にしたものの記録に専念する中で、街並みの変化やビルが立ち並ぶ様子に関心を抱き、自身の記憶やイメージと重ね合わせるように陶芸作品を制作しました。また日本庭園から着想し、じょうろ職人と協働して制作した、水が循環する銅の彫刻を展示します。

ツアーワークショップの様子 2025
撮影:Mikko LUOSTARINEN
二国間交流事業プログラム<ヘルシンキ>
滞在期間:2025.8-11
滞在場所:HIAP[ヘルシンキ・インターナショナル・アーティスト・プログラム]
人と土地との関係性やケアのあり方を探究する水野は、元ごみ処理場の埋立地で、現在は動植物に開かれた豊かな生態系をもつヴオサーリ丘陵に着目しました。土壌専門家や丘陵の清掃員などから話を聞いて知見を深め、ツアーワークショップを実施。地質学者と土地の歴史に触れ、歩く中で出合った風景や音と各々の感情を起点に、参加者と協働して音響詩を制作しました。本展ではその記録と記憶から生まれた物語を通じて、人と土地とのより多様で包摂的な関わり方の可能性を提示します。
| 日時 | 2026年6月28日(日)16:00-18:00 |
|---|---|
| 出演 | アナイス・カレニン、アレクシア・アヒレオス、井上拓哉、エドゥアルド・カスティーリョ・ビヌエサ、ノガミカツキ |
| 会場 | トーキョーアーツアンドスペース本郷 |
| 料金 | 無料 |
| 言語 | 日英逐次通訳 |
※日程および参加アーティストは変更となる場合があります。
※手話通訳をご希望の方は、「6/28トークの手話通訳希望」と件名に記載のうえ、6月15日(月)までにメールでご連絡ください。
E-mail: public_program[at]tokyoartsandspace.jp [at]を@に変えてください。
| 日時 | 2026年7月4日(土)16:00-17:00 |
|---|---|
| 出演 | 池添 俊、村上 郁 |
| 会場 | トーキョーアーツアンドスペース本郷 |
| 料金 | 無料 |
| 言語 | 日本語のみ |
※日程および参加アーティストは変更となる場合があります。
※手話通訳をご希望の方は、「7/4トークの手話通訳希望」と件名に記載のうえ、6月15日(月)までにメールでご連絡ください。
E-mail: public_program[at]tokyoartsandspace.jp [at]を@に変えてください。
| 日時 | 2026年8月16日(日)16:00-17:30 |
|---|---|
| 出演 | 宇佐美奈緒、ハラサオリ、水野 渚 |
| 会場 | トーキョーアーツアンドスペース本郷 |
| 料金 | 無料 |
| 言語 | 日本語のみ |
※日程および参加アーティストは変更となる場合があります。
※手話通訳をご希望の方は、「8/16トークの手話通訳希望」と件名に記載のうえ、7月27日(月)までにメールでご連絡ください。
E-mail: public_program[at]tokyoartsandspace.jp [at]を@に変えてください。
| 日時 | 2026年8月22日(土)16:00-17:30 |
|---|---|
| 出演 | ガン・ドンフン、Synphysica、ディエゴ・ペレス |
| 会場 | トーキョーアーツアンドスペース本郷 |
| 料金 | 無料 |
| 言語 | 日英逐次通訳 |
※日程および参加アーティストは変更となる場合があります。
※手話通訳をご希望の方は、「8/22トークの手話通訳希望」と件名に記載のうえ、7月27日(月)までにメールでご連絡ください。
E-mail: public_program[at]tokyoartsandspace.jp [at]を@に変えてください。
宇佐美奈緒
水野 渚
ハラサオリ
アレクシア・アヒレオス
アナイス・カレニン
ディエゴ・ペレス
エドゥアルド・カスティーリョ・ビヌエサ
ガン・ドンフン
池添 俊
井上拓哉
村上 郁
ノガミカツキ
Synphysica(方 志軒<ファン・チーシュアン>&周 巧其<チョウ・チャオチー>)