Vartan AVAKIAN
更新日:2012.9.1
インスタレーション、ビデオ、写真と幅広い専門分野を持つアーティスト。カタルーニャ工科大学とバルセロナ現代文化センターで建築と都市文化を学び、レバノン・アメリカン大学でコミュニケーション・アートを学ぶ。アヴァキアンは中東、アジア、ヨーロッパ、アメリカの各地で展覧会を開催。近年の主な展覧会に、「Transmediale 2K+12」(ベルリン、ドイツ、2012年)、「シャルジャ・ビエンナーレ10」(シャルジャ、アラブ首長国連邦、2011年)、「第5回ジャカルタ国際ビデオフェスティバル」(ジャカルタ、インドネシア、2011年)、「第33回モンペリエ地中海映画祭」(モンペリエ、フランス、2011年)、「第2回アンタキヤビエンナーレ」(アンタキヤ、トルコ、2011年)、「Home Works V」(ベイルート、レバノン、2010年)、「Journées de la Photographie 10」(フランス文化センター、ダマスカス、シリア、2010年)、「アート・ドバイ」(ドバイ、アラブ首長国連邦、2010年)等がある。また、作品は2012年に森美術館、The Sultan Gallery(クウェート)、Wallach Art Gallery(ニューヨーク、アメリカ)、 2011年にPratt Manhattan Gallery(ニューヨーク、アメリカ)、South London Gallery(ロンドン、イギリス)、Can Felipa(バルセロナ、スペイン)、Gertrude Contemporary(メルボルン、オーストラリア)、ACVIC(ヴィック、スペイン)、Cer Modern(アンカラ、トルコ)、The Cube(台北、台湾)、Museum Alex Mylona(アテネ、ギリシャ)、Al Hoash(エルサレム、イスラエル)、The Goethe-Institut(カイロ、エジプト)、2010年にアートセンター(ベイルート、レバノン)、Townhouse Gallery(カイロ、エジプト)、2009年にトーキョーワンダーサイト、Galerie Sfeir-Semler(ベイルート、レバノン)など世界各地で展示される。芸術家グループ「Atfal Ahdath」の創始メンバーであり、現在ベイルートを拠点に活動。
私は過渡期における不具合、不完全、緊張を好む。2007年の双方向型インスタレーション「The Time of Heroes」は、ヒーローと悪役、幼年期と青年期、戦争と平和といった摩擦が生まれる場を作りあげた。作品は、事実上の完全に機能するピンボールマシーンである。レバノンが戦中から戦後へと移り変わる80年代後半から90年代初頭に設置された「ゲーム」をもとにデザインされている。誰もが「ヒーロー」になれるという、アクション映画のシナリオのような非現実的で無意識のゲームを展開しながら、その時代のありふれた要素が星座のように見えてくる。この困難で不安定であった時代は、社会的知覚の重要な観測点である。
研究を通して、私の作品は建築や都市文化の枠組みに確固として根ざすものとなった。特に、都市の政治構造やアイデンティティーが焦点である。変わり続けるベイルートや都市部のイメージ、レバノンの政治情勢を明らかにし、理解するために、私は過去数年間に渡ってレバノンのアクション映画を研究してきた。2011年の「The Revenge of Geography」は、レバノンのアクション映画によって作り出された架空の世界を地図化したものである。それは、ベイルートの新しい地勢図であり、戦時中の都市の地理的崩壊と政治的再構築を暗示します。この文脈において、仮想と現実は相互に依存し合い、不可分な存在である。
私はまた、制作過程とその見え方、作られた商品やアイデンティティー、願望が、どのようにポップカルチャーの中に再び現れるのかに関心がある。2009年のビデオ「ShortWave/LongWave」において、私は映画やテレビ・シリーズの中に見られる、ニューヨークのスカイラインという普遍的な都会の理想的イメージと戯れている。この作品は、地平線上に描き出されるベイルートとニューヨークの都市のシルエットの間にある緊迫した混乱状態を作りだしている。
私は中東において支配的な言説と知見を脱構築する手段として、ユーモアを交えながら、厳粛な誇張と風刺を用いようと試みる。それによって、作品は驚きと多義性に満ち、冗談めいた媒介的戦略となる。