更新日:2026.3.18
| 参加プログラム | キュレーター招聘プログラム |
|---|---|
| 活動拠点 | ブカレスト(ルーマニア) |
| 滞在都市/滞在先 | 東京 |
| 滞在期間 | 2025年10月 - 2025年11月 |
私の現在のリサーチは「変身(メタモルフォーシス)」という主題に集中している。すなわち、死の危機に直面した身体が別の身体へと変化し、この世界での新たな存在のあり方を獲得するという状況である。このとき、図と地の関係が再構成され、自我と環境の双方が変容する。私は、変身のイメージを用いて、危機の中にある存在を描く身振りのアーカイブを構築している。制御を超えた力によって変容していく世界の中で、私たちが「何になりうるのか」を学ぶための、別様の身体の集積、「ソマテーク(身体のアーカイブ)」である。
このレジデンシーは、私の「変身(メタモルフォーシス)」に関する探究の地理的視野を広げる絶好の機会であると考えている。神話や現代の実践における変身と、現在の問いや不安とのつながりを、異なる文化的文脈の中で学ぶことができるからである。神話は、他の手段では語ることのできないことを語る、特有の象徴的機能を担っている。その逆説性や非論理性、物理的不可能性は、現在における集団的な慰めの場面を生み出す。現代アーティストの手にかかると、物語や寓意的な装置は、過去と未来、混沌と形のあいだを行き来する望遠レンズのような役割を果たす。
日本においては、変身の神話がいかに社会の自己認識への問いかけとして、また歴史や現在を批評するための芸術的手段として、繰り返し語られてきたのかを理解したいと考えている。私の最初の問いは非常にシンプルである——「なぜ神話は繰り返し語られるのか?」ということだ。それらはどのような欲望、危機、集団的な危険感覚や慰めの必要に応えるのか。変身というフィクションと現実世界との関係は何か。変身の神話は、人間的な意味づけを担った非人間的な存在たち——モンスターや幽霊、ハイブリッド、生き物、他者の身体——に人格を与える。それによって、彼らは人間化され、同時に非人間化もされ、「人間であること」の恍惚と悲惨を体現する。 私は、民俗学者、人類学者、文化史家の研究、さらに作品鑑賞や芸術的実践を通して、これらの力や変換が日本という特有の文脈の中でどのように組織されているのかを研究したいと考えている。
レジデンシー期間中、私はマンガノジュール(多金属団塊)の研究に取り組んだ。これらは、水深4〜5キロメートルの海底に存在する小さな地質学的形成物であり、1500万年前にサメの歯や鯨の骨を核として周囲に物質が付着・集積することで形成されたものである。その鉱物組成にはレアアースが多く含まれており、通信技術およびエネルギー貯蔵技術にとって不可欠な資源となっている。
日本は、南鳥島周辺のマンガノジュール鉱床の開発プログラムにおいて、おそらく世界で最も先進的な国である。私は、マンガノジュールが東京においてさまざまな博物館的文脈 —科学・イノベーションギャラリー、鉱物コレクション、そして技術見本市— のもとで展示されているあり方を探求した。それぞれの文脈は、深海採掘と生態系、資源採取と経済停滞という論争的な問いをめぐる、固有のイデオロギー的枠組みを備えている。また本研究は、地球規模の激変とポリクライシスの時代における有機物と無機物の変容の事例研究として、骨・石・息吹の変成的集合体としてのマンガノジュールについても考察した。

千葉工業大学でのリサーチ写真

千葉工業大学でのリサーチ写真
今回のリサーチは、特に2027年にルーマニアで企画予定の重要な展覧会に向けたものであり、レジデンス期間を通じて大きく進展した。マンガノジュールについての理解、その経済的および生態学的役割、さらには現代世界をめぐるナラティヴにおいてそれらが果たす機能についての認識は大いに深化した。
また、純粋に科学的な物語から離れ、芸術的実践や重要な芸術的局面へと向かう思弁的な展開も発展させることができた。
その多くの例の一つとして、河原温の1952年から56年にかけて東京で制作された、彼がコンセプチュアル・アートの代表的作家となる以前の作品との出会いが挙げられる。この作品は石化と液状化、白熱と氾濫といった状態やメタファーの連関について考察する契機となった。
このレジデンスは、キュレーターとしての自身の実践において重要な節目となるプロジェクトに向けた、おおきな足がかりとなった。

河原温《Stones Thrown》キャンバスに油彩, 1956
ニューヨーク近代美術館コレクション

河原温《塵捨場》キャンバスに油彩, 1956
ニューヨーク近代美術館コレクション

東京大学ミネラフロントでのリサーチ写真

Maso Finiguerra,《Deucalion and Pyrrha》、「The Florentine Picture Chronicle」のドローイング、 1473
大英博物館アーカイブ