更新日:2024.12.6
参加プログラム | 海外クリエーター招聘プログラム |
---|---|
活動拠点 | バンクーバー |
滞在都市/滞在先 | 東京 |
滞在期間 | 2024年5月 - 2024年7月 |
触れたものの質感を音に変換する楽器となる白杖《Acoustic Mobility Device》のバージョン2.0の制作を進めるつもりである。このオブジェのデザインは、2015年にボストンのオーリン大学にある、デザイナーのS.ヘンドレンのAdaptive and Assistive Technologies Labで自身が制作したバージョン1.0に基づく。バージョン1.0では、杖の「触角」に内蔵された接触マイクが質感を音に変換し、ヘッドフォンやスピーカー、この杖専用の変調装置(フェンダーのエレキギター用エフェクターから作られた多機能デバイス)を通して送信される。
「滞在目的」に記したバージョン2.0制作の目的は、個人的使用やコラボレーション、アート・オブジェとしての展示を通して、その弱点を見つけ、デザインの利便性と堅牢性を向上させることである。デザインを繰り返す中で、ミュージシャンとのコラボレーションや、私がソロ演奏で作るサウンドをライブ・ミキシングする際に、独立して操作できる楽器として使用できるように改良していくつもりだ。
東京に滞在することで、日本のエレキギター・メーカーとのパートナーシップ構築も目指している。サウンド・テクノロジー、楽器のデザイン、製作に関して、パートナーとなる企業が持つ知識やリソースがプロジェクトにとって有益になると考えている。
カナダのノイズ・アーティスト、The RitaのSam McKinley氏とともに《Loud Cane 1.0》を開発し、エフェクターとミキサー、PA機器に接続して触れた物の表面の質感を音に変換する、パフォーマンスのためのサウンド・ケーン(楽器となる白杖)を制作した。同時にAdrian Mcbride氏やすずえり(鈴木英倫子)氏、浦 裕幸氏、INCAPACITANTSの美川俊治氏といった数多くのサウンド・アーティストと出会い、この杖でのパフォーマンスの可能性を探った。彼らとはスタジオ・セッションを行い、その模様をレコーディングしたが、そこではホームセンターで購入した木製パネルや針金フレーム、石/陶板タイル、床敷物、ゴザ、一斗缶といったたくさんの資材と杖を接触させ、ノイズを生み出した。また、オンタリオ州ロンドンのVibraFusionLabとのコラボレーションにも取り組み、David Bobier氏とJim Ruxton氏のデザインによる、聾や難聴を持つ人が、発された音を振動として感じ取る手段として機能する(振動触覚感知型の)壁面パネルと枕を製作した。
《Loud Cane》
Adrian Mcbride氏、すずえり(鈴木英倫子)氏とのセッション
Adrian Mcbride氏、浦 裕幸氏とのセッション
2015年に最初のサウンド・ケーンを制作したが、Sam McKinley氏と《Loud Cane 1.0》を制作するまでは、この杖にパフォーマンスの可能性があるとは本当に想像できなかった。《Loud Cane 1.0》のおかげで、サウンド・アーティストとのコラボレーションや、自身と彼らの活動の間にある共通性を見出すことが可能になった。音楽制作をしたことがない人間としては、このことは自身の創作活動の今後の展開において重要なポイントであり、スタジオやステージで必ずまた経験したいと思えるパフォーマンスができたと同時に、一連のサウンド・ケーン作品により今後の選択肢が格段に広がったことを確信している。