更新日:2024.9.9
参加プログラム | 国内クリエーター制作交流プログラム |
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活動拠点 | 埼玉県 |
滞在都市/滞在先 | 東京 |
滞在期間 | 2024年5月 - 2024年7月 |
日本戦後史を主題にした大型の絵画作品の構想、そのためのリサーチ活動を行う。特に戦後から今日までの日本の経済状況の変化、東京の市井の人々の生活を踏まえた上で、芸術の営みを年代記的に収集したい。そこでは、美術とは違う角度から社会の情勢と密接した人々の生活を描いてきた日本映画の歴史を参照対象として含める予定。インターナショナルなレジデンス環境と、「分断を越えて」というテーマを踏まえて、限定的な地域や時代を懐かしむのではなく、異なる文化的背景を持つ人々とも共有可能な絵画や物語の構造を探求することが目標である。
戦後の日本をテーマにした大型の新作絵画を制作するためのリサーチ、コンセプト作り、素材の実験を行った。特に戦後の日本映画をリサーチする中で、国立映画アーカイブで1964年のミュージカル映画《君も出世ができる》に出会った。それがきっかけで、《ダンシングサラリーマン》という作品が生まれた。また、鶴見俊輔を中心とする戦後の思想家についてもリサーチを行い、その時代の社会的・政治的背景について理解を深めた。このリサーチを基にして、「思想家の曼荼羅」という別のプロジェクトも計画した。これら二つのプロジェクトは、TOKASの近くにある和紙の卸売会社である森木ペーパーとの出会いをきっかけに、和紙を支持体に選んだ。
ほかのレジデント、TOKAS滞在中に出会った人々との情報交換や会話から、新しいインスピレーションを得られることが多くあった点が大きな収穫としてある。それはリサーチの手法、素材の選択、作品や人物などリサーチ対象との出会いなどにおいて影響が大きかった。リサーチのフォーカスが「戦後日本」という広範囲な設定から始まったので、開始時にもう少し的を絞れていたらリサーチはよりスムーズに進んでいたかもしれないというところが反省点である。今後の展望としては、和紙を使う制作は、素材の柔軟性、物理的な軽さ、東アジアの素材としての歴史的特性から、その可能性を発見したので、継続、発展させたい。