ネストール・シレ

レジデンス・プログラム

海外クリエーター招聘プログラム

更新日:2024.7.26

ネストール・シレ

参加プログラム 海外クリエーター招聘プログラム
活動拠点ハバナ
滞在都市/滞在先東京
滞在期間2024年1月 - 2024年3月
滞在目的

この8年間、「CubaCreativa」と称した継続的な芸術研究プロジェクトを行っており、様々な国際的な文脈で展覧会を開催してきた。この芸術研究プロジェクトは、社会的創造性、遺産、伝統、大衆文化、生き抜く術における文化に焦点を当てている。 キューバ(グローバル・サウス)の現実を出発点として、日本の文化と歴史における2つの特定の概念、「珍道具〜Chindōgū」と「裏技〜Urawaza」の接続点を探求するつもりである。そして地元の作り手のコミュニティと共同で発展させていくオブジェまたはインスタレーションにおいて、この2つのコンテクストから得た知識と創造的実践を結び付けると同時に、プロジェクトでのリサーチ成果を盛り込んでいく。

滞在中の活動

グラフィック・デザイン、ビデオ、3Dモデルを使ったマルチメディア・インスタレーションを制作するために、社会的創造性とイノベーションの実践に関連する日本の2つのコンセプトのリサーチに主に焦点を当てる。
・「珍道具」
ゲーマーの世界におけるコンピュータ・シャーシ(筐体)の創造的モデルを記録する自身のPCゲーマー・プロジェクトに関連して、このコンセプトを研究する。
・「裏技」
「裏技」のコンセプトとその歴史的つながりを探る。これについては、キューバの経験と近いものがあると考えている。「裏技」の歴史は第二次世界大戦前にさかのぼるが、このイノベーションの形が特に有用であると証明されたのは戦後のことである。キューバ全土で、人々はより少ないものでより多くのことをする方法を見つけ出そうとしていた。キューバは、幾重にもわたる危機を経験してきた。1990年に社会主義陣営が崩壊し、アメリカの対キューバ禁輸措置が強化された後、「平和時の非常時」と呼ばれる経済破綻が起きた。その結果、日本の文脈と同様に、生存を確保するために不可欠となった創造的な実践が急増した。その意味で、90年代のキューバで『Con Nuestros Propios Esfuerzos』という本を通じて共有されたヒントを、「裏技」の多くの要素と結びつけるつもりである。 この共同マルチメディア・プロジェクトの最終的なプレゼンテーションは、ワークショップの開催、出版、マルチメディアを駆使したインタラクティブなビジュアル・インスタレーションなど、形式もメディアもさまざまである。

滞在中に行ったリサーチ及び制作活動

「珍道具」と「裏技」という、社会的創造性とイノベーションの実践に関連する2つの日本的なコンセプトのリサーチに注力した。このリサーチを通して、東京ハッカースペースとのコラボレーションで生まれたのが、自身の取り組むCubaCreativaプロジェクトにおける作品《PC ゲーマー》である。ラテンアメリカのゲーム・コミュニティからヒントを得て、ゴムや車のホイールの中に最適化されたモジュール式のコンピュータを開発した。材料と技術は秋葉原のリサイクルショップで手に入れ、デザイン・ソリューションはオープンソースの哲学に則って考案した。

「Disconnected worlds」Tokyo Hacker Spaceでのレクチャー

《PC Gamer [GOMA]》ワーク・イン・プログレス、Tokyo Hacker Space、2024

滞在の成果

このプログラムに応募する前から、「珍道具」と「裏技」のコンセプトについての理論的な文献は知っていた。加えて、中古機械販売店を巡ることと日本のDIYコミュニティと交流することに強い関心を持っていた。この3ヶ月間のプログラムは、作品制作のためにスタジオを利用しながらアーティスティック・リサーチを行うのに理想的だった。特に、制作過程と完成した作品の両方を展覧会形式で発表する機会を与えてくれたレジデンスには感謝している。さらに、TOKASのプログラムには、プロジェクトを発展させ、アイデアを思いついたのと同じ状況下で最終的な作品発表を行うだけの必要な時間があり、他にはない特別な特色になっていると感じている。
東京では、秋葉原と「東京ハッカースペース」という、自作文化やDIY気運、ゲーマーやオタクのコミュニティとつながりのあるスペースで、ほとんどの時間を過ごした。このような環境に身を置き、人々と交流したことは、自身のアートプロジェクトを発展させる上で重要な経験となった。

《PC Gamer [GOMA]》特注のハンドメイドパソコン
Photo by VIRA

《PC Gamer [GOMA]》特注のハンドメイドパソコン
Photo by VIRA

クリエーター情報

ページの先頭へ