更新日:2024.8.5
参加プログラム | 二国間交流事業プログラム(招聘) |
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活動拠点 | バーゼル |
滞在都市/滞在先 | 東京 |
滞在期間 | 2024年1月 - 2024年3月 |
私の作品では、芸術活動と料理への関心を融合させることがある。私は自然物質や生物としての菌類に興味があるので、共存や共依存の物語を見つけるために、料理の世界における菌類や菌糸の利用に興味を持ち始めた。私は、食品製造における麹菌アスペルギルス・オリゼ(二ホンコウジカビ)の利用に焦点を当て、人間と菌類との関係の詩的な側面を翻訳したい。また、日本の文化的なアートシーンにも興味がある。
東京での滞在では麹文化や日本の発酵文化全般について見識を深めることを計画しており、味噌製造者、醤油製造者、麹製造者、麹菌製造者、研究者など、さまざまな分野で働く人々のもとを訪れた。山梨県、愛知県、和歌山県、香川県にあるさまざまな発酵工場を訪ねた。いずれもいまだに木桶で発酵させる伝統的な生産者だ。麹文化について調べているうちに、衛生環境や無菌環境といった工業化された論理とは対照的な、生産に使われる伝統的な素材としての木の使用に興味を持った。そして、杉の木版の表面にドローイングやイメージを彫り込んで制作を始めた。同時に異なる色の麹菌を使い、インスタレーションの制作を始めた。リサーチの締めくくりとして、リサーチと自分の考えについてのエッセイ風ビデオを制作した。
リサーチ訪問:金笛(笛木醤油)(埼玉県)
リサーチ訪問:まるや八丁味噌(愛知県)
リサーチ訪問:ヤマロク醤油(香川県)
リサーチ訪問:かめびし屋(香川県)
麹の仕事と生産について、とても深く掘り下げることができた。さまざまな場所を訪れる機会を与えてくれたこと、そしてTOKASがそれらの場所とのコンタクトを手助けしてくれたことがとても嬉しかった。このリサーチ手法をとるのは良いアイデアだと思った。残念ながら、大学の研究者たちとコンタクトを取る時間も人脈もなかった。次の機会には、このトピックについて違った視点を持つために、研究者たちとの関係構築を重視したい。私はこのテーマに取り組み続けるつもりだし、この研究は私に木工や彫刻の仕事をより身近なものにしてくれた。同時に、バーゼルに食文化のための学際的なスペースを作るというアイデアについて、より深く考えるきっかけにもなった。今、資金調達とプロジェクト開発のために、コンセプトを練っているところである。日本に来るのはこれが最後ではないだろう。日本で出会った人たちや発酵に携わる人たちとのネットワークを大切にしていきたい。
20年熟成の醤油と50年熟成の醤油を製造しているかめびし屋の醤油工場を訪問することができ、大変光栄であった。彼らはとてもオープンマインドで、製造工程を熱心に見せてくれたし、室(むろ)のインキュベーターに接種した基質を充填する工程にも参加させてくれた。
また、井上刃物店の店主に会えたことも嬉しかった。彼はとても気さくに店内や商品を見せてくれた。道具や木工・彫刻の仕事について多くを学んだ。
オープン・スタジオでの展示風景、2024年、杉材、野草、黒麹、緑麹、白麴、15×20 cm
オープン・スタジオでの展示風景、2024年、杉材、野草、15×20 cm
映像作品より、2024年、10分34秒