マルコ・ヴオリネン

レジデンス・プログラム

二都市間交流事業プログラム(招聘)

更新日:2024.7.30

マルコ・ヴオリネン

参加プログラム 二国間交流事業プログラム(招聘)
活動拠点ヘルシンキ、ニューヨーク
滞在都市/滞在先東京
滞在期間2023年9月 - 2023年11月
滞在目的

作品は極めて個人的なものであり、各プロジェクトに多大な時間と労力を要するが、手がけた作品全体の集合的なインパクトは、個々のパートよりも大きな重みを持つという哲学を持っている。東京に住む個人を主人公にしたドキュメンタリー・ポートレートを制作し、そのライフストーリーを共有することで、自身の映画シリーズを展開することを楽しみにしている。東京は、豊かな歴史と活気に満ちた現代的事物を持つ世界有数の大都市であり、このプロジェクトの完璧な舞台となる。

滞在中の活動
  • ノンバイナリーであることを自認し、女性として生きる若者のライフストーリーに焦点を当てた長編ドキュメンタリー映画を撮影する
  • 社会正義、ジェンダー、セクシュアリティにまつわるテーマに重点を置いたドキュメンタリー写真プロジェクトに取り組む
滞在中に行ったリサーチ及び制作活動

長編ドキュメンタリー映画の制作を開始した。この映画は、受賞歴のあるシリーズの新作であり、世界中の家父長制社会の片隅で生きる女性やノンバイナリーの個々のライフストーリーに焦点を当てる。東京で制作するこの映画で、日本社会の厳格で規範的なルールが、特に性的自由とジェンダー・アイデンティティについて、従来「普通」とされてきた狭い定義に適合しない個人にどのような影響を与えるかを探ることが自身の目標だった。

私自身の仕事のやり方は、どんな場所でも一貫しており、東京でもそうであった。先入観を極力排除し、オープンな心構えを持ってこの都市にやってきた。目指すのは、男女平等とセクシュアリティに関するタイムリーでローカルな視点を捉えたドキュメンタリー・ポートレートを作ること。東京でのゆっくりとしたライフスタイルと、アンダーグラウンドなサブカルチャーイベントへの参加を通じて、次第に映画の焦点を定め始めた。明確なテーマを設定した後、キャスティングのプロセスを進めた。目標とするのは、2023年の東京における共感、ジェンダー、セクシュアリティの物語を紡ぎながら、映画のテーマに説得力のある軸を据えることができるストーリーを持つ人物を見つけることであった。

マルコ・ヴオリネン: Emiのドキュメンタリーより、2023年

マルコ・ヴオリネン: Emiのドキュメンタリーより、2023年

滞在の成果

長編ドキュメンタリーのポートレートに必要な映像のほとんどを撮影できた。この映画は、34歳のBDSMの女王であり、フェミニスト至上主義を声高に主張するエミの人生を描いたものである。日本で生まれたエミは、大学時代をアメリカで過ごし、2015年に帰国した。フェティッシュとBDSMの世界での自分の役割を完全に受け入れ、夢の仕事と考えるまで自分の職業に深い充実感を得ている。昼間はヴィンテージアイテムやジュエリーを扱う仕事に従事している。勤務時間が終わると、彼女は権威と支配の人物に変身する。この役割の中で、彼女は客の要求に応じてサディスティックな行為に及び、寛大な報酬を提供する客に奉仕する。

この映画は、東京・歌舞伎町のラブホテル内でのエミの生活を深く掘り下げている。しかし、エミの物語はプロフェッショナルな領域を超え、人間という存在が持つ入り組んだ複層性を説得力を持って描いている。このドキュメンタリーは、彼女がプロのサディストで、フェミニスト原則の強力な支持者であるだけでなく、私生活においても思慮深いパートナーであることを描写する。この映画は、人間の経験の非二元性を明るみにし、人生は単に黒か白かではなく、多様で交差するアイデンティティと役割のスペクトラムであることを強調する。

東京という都市には、感情的に抑圧的と感じられる独特の規範意識がある。このような雰囲気の中を通り抜けられるようになったことは、レジデンスにおける最も貴重な学びであった。 このレジデンスで最も印象に残っているのは、都会でゆっくりとしたライフスタイルを取り入れ、東京のアンダーグラウンドなサブカルチャーと関わり、隠れたシーンを徐々に発見していったことである。このような環境で生きる人々と知り合えたことは、私の重要な経験である。

マルコ・ヴオリネン: Emiのドキュメンタリーのティーザー、2023年
音楽:波多野敦子《Bleeding Heart》2023年

クリエーター情報

ページの先頭へ