更新日:2021.10.15
参加プログラム | リサーチ・レジデンス・プログラム |
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活動拠点 | 京都、滋賀 |
滞在都市 | 東京 |
滞在期間 | 2021年10月 - 12月 |
都市はその範囲にある全ての要素が分類され尽くされ、人間にとって不要なものが排除されていきます。しかし、過剰に複雑に発展していく都市においても、はっきりとした用途を持たない一時的な空白の場所が現れていると思います。都市の機能の一部に介入し、場所についての気づきや、自然の中で行ってきたフィールドワークや制作方法を用いて、都市をリサーチしたいと考えています。
東京を流れる川や水路についてリサーチし、風景と身体の関係についての作品制作を行った。自転車を使って街を巡ることで、身体を通して都市を把握していき、現在の皇居、かつての江戸城を中心とする堀や水路から、江戸時代から発展し続ける都市の基本的な構造を理解することができた。また、川や橋の周辺には、都市の中にあっても周縁的な側面が見て取れ、そこには時間の経過とともに、様々なものが流れ着き堆積していた。時が来れば綺麗に片付けられてしまうであろう川辺の風景は、都市の中で見過ごされる意識の隙間でもある。そのような川辺の風景を撮影したフィルムのイメージを身体に投影し、映像作品の制作を行った。
第1回スタジオビジットの様子(堀元彰氏)
第2回スタジオビジットの様子(三田村光土里氏)
神田川クルーズの様子
キュレーター、Aliwen Muñozとの川沿いのリサーチの様子
今回のレジデンスは、あまり経験したことのなかった都市での滞在であり、滞在以前から行っている、風景と身体の関係についての作品制作において、新たな成果を得ることができた。人間に関わる様々なものの密度において、都市と、これまで制作を行ってきた自然の中の環境は大きく異なっているが、場所に入り込み、作品制作を試みる中で、最終的には自然の中と同じ感覚で制作を行うことができた。都市において、自分の入り込める空間を探していくと、河原や空き地など、一時的な空白と呼べる場所は無数に見つけることができた。リサーチを進めると、東京における川の流れは、江戸時代に始まった都市の形成とともに出来上がり、現在まで続く都市の基礎構造となっていることに気づき、水の流れに沿ってリサーチを進めていった。発達した都市において、物資の輸送経路としての機能が失われた水辺の風景は、ある種の周縁的な場所とも考えられ、様々な解釈の余地が生まれていると感じた。都市へのリサーチにおいて、川に着目するというありふれた視点から始めることで、表面に見えている風景だけでなく、土地に積層された時間も取り込みながら、自身との接点を作ることができた。
高架下での自撮り
トーク・イベント「内なるイメージと風景について」後に港千尋氏と
オープン・スタジオ2021-2022/12月での展示の様子 撮影:前谷 開
オープン・スタジオ2021-2022/12月での展示の様子 撮影:前谷 開
助成:公益財団法人 小笠原敏晶記念財団