上村洋一

レジデンス・プログラム

二国間交流事業プログラム(派遣)

上村洋一

参加プログラム   
二国間交流事業プログラム(派遣)
活動拠点 日本
滞在都市/滞在先ヘルシンキ/HIAP (Helsinki International Artist Programme)
滞在期間 2021年9月 - 2021年11月
滞在目的

私は「氷河の忘れ物」をテーマに大陸的氷河の痕跡をリサーチし作品制作を行う。かつてスカンジナビアを覆っていた広大な氷河は、国土の表面に溝をつくり、磨きあげた。氷河は1万年前に後退したと考えられ、氷堆石、氷堆丘、エスカーそして、多数の湖といった多様な地形を残した。そのなかでも、私はヘルシンキ市内にあるテンペリアウキオ教会の中にある岩盤に関心を持った。この教会は巨大な岩をくり抜いた中に造られ、教会の内壁はくり抜いた岩盤がむき出しになっている。この岩盤の空間は音響効果が優れており、音響学者マウリ・パリョの助言により、いまもそのままで使われている。そしてこの岩盤の表面には氷河が削り取った痕跡を見ることができる。この建築はまさに氷河の記憶を留めた音響建築と言える。
私がこの建築空間に関心を持ったきっかけは、2017年にスイスのヴァルスにある、世界的建築家ピーター・ズントーが設計した「テルメヴァルス」の建築空間の反響音と振動を録音した経験である。彼の代表的作品でもあるこの温泉建築は、地元で採取されるヴァルス石を材料として地元の職人によって建設された。そして、その建築物は近代的でありつつも、ヴァルスの深い谷に半分その身を埋め、その地域の記憶を孕みながら環境に溶け込んでいた。このように建築という人工物でありながら、自然との関わりを深く感じさせるテンペリアウキオ教会の音を録音することで、人工/自然の二項対立を超えた自然との関わりを探求したいのである。

滞在中の活動(計画)

テンペリアウキオ教会の建築空間をフィールドレコーディングとドローイングによって音響的/視覚的に記録していく。建築内部の空間はバイノーラルマイクによって録音し、内壁の岩盤に刻まれた氷河の痕跡はコンクリートマイクを使うことで、その内部振動を捉えることができる。また、ヘルシンキ市内には氷河が削り取った痕跡を持つ岩盤がいくつも存在している。それを上記と同じ方法で記録していく。
また、ヘルシンキから1時間圏内にあるフーグベリイエッツ洞窟の音もレコーディングをする。この洞窟は、氷河の退氷期に形成され、流れてきた雪解け水で、岩の割れ目に強い圧力がかかり、えぐられて垂直な穴が作られた。リサーチ素材を元に、サウンドアートピースを制作する。またヘルシンキのアーティストとコラボレーションしてサウンドパフォーマンスも行う。

9月:テンペリアウキオ教会のフィールドレコーディング/リサーチ
10月:ヘルシンキ市内の岩盤およびフーグベリイエッツ洞窟のフィールドレコーディング/リサーチ
11月:リサーチ素材を元に作品の制作・発表


クリエーター情報

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