ベティーナ・ベルガー

レジデンス・プログラム

その他(レジデンス・プログラム)

更新日:2019.11.28


ベティーナ・ベルガー

参加プログラム    国際推薦人プログラム
活動拠点スイス/ドイツ
滞在期間 
2010年2月 - 2010年4月
滞在目的

滞在目的は東京のアーティストに会い、コンサートやパフォーマンスを鑑賞し、東京という街の豊かでダイナミックな文化風景を楽しむことである。特に、日本の舞踊や演劇の形式に興味がある。また、TWSに滞在しているアーティストたちとクリエイティブな視点のやりとりをしたい。そしてもちろん、東京の顔、音、におい、色、温度やフレーバーを発見するのを楽しみにしているし、それらが私の活動にどんなインスピレーションを与えてくれるのか楽しみである。

滞在中の活動

OPEN STUDIO 2009
2009年度 TOKYO EXPERIMENTAL FESTIVAL ─SOUND, ART & PERFORMANCE
第3回 インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー
作曲ワークショップ(文京区立本郷台中学校)
アートの課題「 音楽と権力─音楽の政治的側面」



最初の数週は、日本の演劇の形式について理解を深め、現在や将来の作品にきっと思いがけない方法でインスピレーションを与えてくれるのではないかと期待する。この探求は、東京の俳優やダンサー、演出家、振り付け師などとのコラボレーションにつながるかもしれない。
もう1つの目的は、小学校の子どもたちに現代音楽と即興を体験させることである。現代音楽の普及に関する教育学上の異なるコンセプトについて、東京の作曲家か演奏家と意見交換し、協働でワークショップを開きたい。

滞在制作成果
日本に到着してすぐTWSにて開催されたEXPERIMENTAL SOUND, ART & PERFORMANCE FESTIVAL(以下ESAP FESTIVAL)は、共通の興味や視点を持った多くのアーティストとすぐに知り合えたという点で、実際に東京に滞在するにあたって力強い手引きとなった。新進の若い才能あるアーティストたちによる幅の広い刺激的なコンサートやパフォーマンスによって構成されたこのフェスティバルは、とても強い印象を私に与え、特にそのうちのいくつかの作品は即座に私の活動に影響を与えそうであった。フェスティバルにおける私自身の講演リサイタルでは、いくつかのアイデアと最近思いついたパフォーマンスについて話をし、興味を示してくれた参加者が多かったことから好評を得たと自負している。この最初の数週間には、素晴らしい歌舞伎や能、現代筝曲フェスティバルや舞踏のワークショップにも出かけ、とても感動した。

東京滞在中に、TWSは本郷台中学校の生徒たちと協働する作品の手助けをしてくれた。TWSに滞在していた作曲家の桑原ゆうと共に、学校のブラスバンド部の14歳の子どもたちに向けたワークショップを開催した。短いウォームアップを経て、子どもたちの学ぼうとする姿勢や予期せぬ課題に挑戦する姿をとてもオープンに感じた。たとえば、身体をパーカッションに見立てたりそれぞれの管楽器を例に取るなどして、ポリリズム的な構造を実践するなど、私たちは集中力を研ぎ澄まし、知覚を敏感にし、彼らの音楽スキルを上げる練習法を実践した。私たちの主たる狙いは、彼ら特有の音色のクオリティを明らかにしながら、生徒たちの楽器による新しいサウンド、つまり彼らのクラシックな音楽的バックグラウンドでは必要のない雑音やトーンを探ることであった。レジデンス滞在の終わりに上演した共作の楽曲は、この豊かな音のパレットと子どもたちの輝かしい創造性とを併せて発展させたものである。

この体験は新鮮で、学生たちを鼓舞させるものであり、よい形で彼らのイマジネーションや音楽へのエネルギーを刺激したようだ。それまではヨーロッパの学校でしか教えた経験がなかったので、授業中や最後のパフォーマンスでの学生たちの真剣で情熱的な演奏にとても興味を持った。同時に、学校で現代音楽を伝えている日本人の同僚と会う機会を得て、彼らの教育的アプローチについて話し合うことができた。特に、ESAP FESTIVALにおける村上理恵と樫下達也(mofa)の《路線図作曲》の教育学上のコンセプトをとても興味深いと思った。

2回の「オープンスタジオ」は、作品を発表し、他の滞在アーティストたちの作品に親しむもう1つの機会であった。3月の2度目の「オープンスタジオ」では、観客の前で当時まだ計画中であった「wellengewoben(編みこまれた波)」の抜粋を試しにやってみることができ、一般の人々との刺激的で実りある一連のディスカッションが可能になった。

私の滞在中にTWSにて三度目のIEMAが開催されたことで、一柳氏とデュサパン氏による作曲セミナー「プロダクションコース」に参加し、開催される多くのレクチャーやパフォーマンスに出席することができた。何人かの講師陣が私の最終プレゼンテーションに出席してくださり、意見を下さったという事実は、私にとって特に価値のあることである。その後ほどなく東京のドイツ文化センターで「アートの課題:音楽と権力」についてのシンポジウムが開催され、私もIEMAやアンサンブル・モデルンのメンバーと共に最後のコンサートに参加した。

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フルート製造で世界的に有名な会社のいくつかが日本を拠点にしているので、その工場を訪ねてみることにした。製造の過程を見、最高級の楽器を試した。また開発部で新しい頭部管ジョイントと胴部管を試して専門家としてレポートを出してくれないかと頼まれた。

交流事業成果
レジデンス滞在の最も素晴らしい側面のひとつは、体験した新しいアイデアを吸収する時間を取りながら、制作に集中する機会を得られたことである。新しい興味の対象を日本の芸術と文化に見つけたので、それを何らかの形で反映した作品に発展させることに集中したい。

TWSでの滞在中に、武道家でパフォーマーのトマツタカヒロとコラボレーションを始めることにした。ESAP FESTIVALで出会い、お互いの作品の表現様式の深い関連性や、息、声、音という概念間の関係性にすぐに引きつけられた。とても自然な理解と共通の主題を持って、私たちが、息、声、音という同じアイデアに焦点を当てた作品を一緒に制作しようと考えるのに時間はかからなかった。これが、3月27日に東京ウィメンズ・プラザで行われた私たちのパフォーマンスの基になっている。上演されたコンサート「wellengewoben(編みこまれた波)」では、日本や西洋の作曲家による現代フルート楽曲レパートリーの主要部を中心に構成し、声と息の異なる面を探求した。また、コンサートでは、マット・ロジャースの《My Heart》の初演と、私とトマツタカヒロが、フルート奏者とロープクライマーとしてより合わせ発展させた即興作品をフィーチャーした。私たちは、これら作品のパフォーマンスを、身体、息、声によるあふれ出すジェスチャーの交流としてキュレートしている。


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TWSに滞在している間に、自分の創造性の新しい側面や自分の芸術的ポテンシャルにおける新しい可能性を発見し、ミュージシャン、パフォーマーとして連続した活動を行うことに興奮する経験の機会を与えてもらった。東京で出会った何人かのアーティストとは、ヨーロッパでの将来の作品においても協働していきたい。なぜなら、彼らとのいくつかのコラボレーションで、私の創造的なポテンシャルが豊かで充実していると感じたからである。たとえば、音楽的な即興と武道をマッチングさせて始めた作品などは、今後も継続していくことに強く興味を持っている。

しかし、このプログラムを最も象徴する経験は、TWSという「人間の小宇宙」において、他の滞在アーティストと協働し、彼らの作品に関わる機会を得られたことである。芸術論の前に人間として交流するこのシナジーは、東京で過ごした時間のなかでしたもっとも貴重な経験である。私は、東京の人々や場所、音と関係性を結び始めたのだ。TWSでの滞在は、まるで能の第一幕での序破急――末永い繁栄のための将来性のあるオープニングーーを見たときのように鮮烈で圧倒的であった。
好結果の制作期間を過ごすにあたって、TWSはあらゆる点において必要なものをすべて揃え、いつも望み以上のことをしてくれた。訪ねてきてたくさんの指摘や情報を与えてくれたり、現地のアーティストを紹介してくれたりすることで、支えられ元気付けられた。

特に、TWSを新進のアーティストとって国際的に名高いプラットホームに導いた家村さんの一貫性と献身に感謝したい。また青山のスタッフの皆さんには、関わりいつも親切にし下さったことに感謝している。彼らは、私を作品に集中させてくれ、「いつもと違う」環境での多くの困難を乗り切る手助けをしてくれ、いつも歓迎されている気分にしてくれた。

TWSはまた、スイス大使館文化・広報部長のアレクサンダー・レングリ氏とコンタクトを取ることを可能にしてくれた。彼の支援と友情に心から感謝している。

クリエーター情報

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