更新日:2019.11.28
参加プログラム | 二国間交流事業プログラム(派遣) |
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活動拠点 | 日本 |
滞在都市 | ソウル |
滞在期間 | 2009年1月 - 2009年3月 |
[ 活動報告 ]
サムジースペースでの『ジャムの瓶詰め小屋』の制作
2009 年の1月から財団法人東京都歴史文化財団トーキョーワンダーサイトの二国間交流でソウルのサムジースペースに派遣され、「ジャムの瓶詰め小屋」を制作しました。3月には10年間の続いたサムジースペースの最後のオープンスタジオに参加し、Epson Korea Co.,Ltd.の協賛でサムジースペースのエントランスホールでの4メートルのプリント、階段踊り場、スタジオでは2メートルのプリントの展示をしました。作品制作には受け入れ先のサムジースペースの関係者や友人からの協力だけでなく、サムジースペースのあるマッポ区で活発な地域活動をしているヨムサン長老派教会や自治会長や社会福祉活動員、アンザン市の福祉課、地域と密着した活動をしている地元のアーティスト、テブ島の警察署など地域方々の協力も得て、3ヶ月間で100人近くの方にご協力をいただき、50人近くの方々のお宅を訪問しました。韓国での『ジャムの瓶詰め小屋』の制作は高齢者との橋渡しをして下さる仲介者の作品への理解と献身なしには成立しませんでした。韓国での制作の動機は、日本にとって韓国が「近くて遠い国」と言われていることでした。高齢者と戦争の記憶は密接な関係があると同時に、高齢者問題を見つめることは、普段あまり考えないようにしていることに注目することでもあり、これは日本人である私にとって、韓国との歴史に対する姿勢と共通点があるように思われたからです。仲介者とのコミュニケーションは作品制作の中で重要な地位を占めています。作品に参加し自宅を公開して下さった高齢者の方々は、日本の占領時代に嫌な思いをなさった方も含め、見知らぬ他人でしかも日本人である私を心から歓迎して下さいました。他人のプライバシーに暴力的なメディアであるカメラを向けることに道義的な違和感を覚える私の心の揺らぎをよそに、プライバシーを公開し、よそ者を受け入れる自信を持っていらっしゃるのです。お会いした方々の良い面だけ見たとは思うのですが、皆さん何かしら問題を抱えていらっしゃいます。それでも、ほがらかに生きていらっしゃり、私たちに会うのを本当に喜んで下さいました。このことは自分自身のわだかまりがはずかしく思えたとともに、更に交流を深める自信と、私自身の未来に何かしらの希望を見いだす助けとなりました。作品は人生のクライマックスである「死」が見え隠れすることから予定調和的な哀愁をともなったモノ自体が語る物語、流行のリバイバルと現実に生きている高齢者の生活のギャップなどを表現するとともに、老いに関する浅薄なイメージに疑問を投げかけ、高齢化社会の中で希望を見いだしたいという願望も映し出していると思います。暖かくダイナミックな韓国の方に囲まれた滞在は感動の連続でした。また、自国のことを見直すとても良い機会でした。これからも交流を保つとともに、より深いコミュニケーションに基づいた作品の発展を模索したいと考えています。