更新日:2019.11.28
参加プログラム | 二国間交流事業プログラム(派遣) |
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活動拠点 | 日本 |
滞在都市 | 台北 |
滞在期間 | 2009年1月 - 2009年3月 |
まず第一に仲の良い友人が台北派遣プログラムに参加し、彼から後日話を聞いて興味を持った事が始まりである。また日本から近い外国から知りたい、始めたい、アジア人としてここから伝えたいという思いがあったからだと思う。
また情報という手に取れないものが多くを占めていて、私は何を信じればよいのかよく判らなくなり、自分がどこにいるのか不安になる。そこで思うのがもう行くしか無いな、という事だ。
現場に行って会って話したり見たりするという事だ。そうすれば世の中の真実は見えなくとも、僕の真実はそこに見いだせるだろう!僕の真実が僕が一番知りたいことだから。
■台北國際藝術村滞在時のリサーチ・制作活動計画
木を使っての製作のため木材、電動工具の現地調達。
藝術村での公開製作。及び近隣の方へのプレゼンテーション。
滞在中の作家、藝術村スタッフ、ボランティア、関係者へのプレゼンテーション。
小学生(1〜6年生)合計20名との竹とんぼ作り。 不特定多数、老若男女の方との竹とんぼ作り。 オープンスタジオ。 ギャラリートーク。 制作した作品を用いての個展。
[ 活動報告 ]
■派遣期間中に行ったリサーチ又は制作活動について
当たり前ですがネジ、ボルト一つ買うにも人と接しなければなりません。まずぼくは台湾の言葉を話せませんでした。現地の方とのコミュニケーションは台湾の言葉を用いなければなりません。そこで日本人の僕は漢字を用いました。いつもペンと紙を持ち歩き買い出しをしていました。ぐるぐると街を長時間歩き回り、街と人に出会いました。
僕は多くの時間を藝術村の広場で過ごし製作しました。そこではトラックの運転手(木を運んでくれました)、80才くらいの池袋の住んでる日本に帰化したしたのおじいさん(池袋サンシャインに住んでいます、最初は信じられませんでしたがお医者さんだそうで)、スイスから来た春休みの青年(もちろん僕もれっきとした青年です、彼は暇だったらしく夕方になるとTAVに来て何回か呑みました)、ランニング中のカップル(彼らとは南台湾を旅行しました、本当にいいカップルでなんだか未来とか子供とか愛とかに希望がもてました)、と多くの人に出会いました。まだまだいて、それぞれの方たちとのお話まだまだあります。個展のタイトルはそんな出会いとお酒の中から生まれました。
が、出会って毎日呑んでいただけではありません、もちろん制作、展示もばりばりしました。
展示のテーマは[FLY FORMOSA]。訳すと「美しい島を飛べ」となります。本当に台湾はたくさんの自然とよくいえばおおらかな時間と親切すぎる友人がいる国です。そこで僕はこんな文章を広告に載せました。
FLY FORMOSA
FORMOSAとは「美しい」という意味のポルトガル語が原義であり、16世紀半ばに初めて台湾沖を通航したポルトガル船のオランダ人航海士が、その美しさに感動して「Ilha Formosa(美しい島)」と呼んだことに由来するといわれている。
さて私は先日海を見ようと仇分、金瓜石へ行った。しかし仇分、金瓜石は霧で覆われ海を見る事は叶えられなかった。だが私には霧の中はっきりと美しく温かい海を見る事ができた。
なぜなら私たちには想像する力があるから。また私たちは鳥のように、それ自身では空を飛ぶ事ができない。しかし私たちは空を飛ぶために想像し絶望しながらも1903年初めて動力を用いて空を飛んだ。
そして2009年私はこの美しい島"FORMOSA"を飛ぶ。願いと意思と葛藤と現実と想像力を用いて飛ぶ。
そしてなによりうれしかったことがありました。先日半搬出のため台北を訪れた際の話です。僕の誕生日が近くスタッフ、ボランティア、友人たちが集まった時の事です。 最近カフェ(TAVの一階にはカフェと夜になるとノンベエのボスが経営するバーがあります。これは2月にオープンしました。ほぼ毎日行きました。)をクビになった女の子が僕に言ってくれた事葉です。「私はあなたとあなたの作品を通して台湾がいい所だって見直せたわ。」なんと作家冥利につきる言葉でしょうか。僕はこれからもこうやって作品を作っていきたいな、作っていいんだなと少し見えた気がしました。僕にとっての最初のアーティストレジデンス、最初の外国での滞在、生活が台湾であったことに感謝しています。有り難うございました。
現実問題として台湾は今変わりゆく時を向かえていると思います。最後に印象に残った友人の言葉を書こうと思います。
「僕たちは戦わなかったんだよ。すべてを受け入れてきた。そういう国なんだ。」
具体的に何があったとかはインターネットですぐに知れるし、言えるでしょう。しかし今僕が大切だと思うのは今ある現実と対峙し感じる事なんだと思います。
深い悲しみを知る国だからこそ、強く優しく美しいんだと僕は感じました。
阿部乳房