複数形の身体

ACT(Artists Contemporary TOKAS)

複数形の身体

ACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 7

身体の複数性から現代社会を考察する

 私たちは、世界を知覚する器官として、身体という構造をもっています。ひとりひとりが、コミュニケーションを生成する主体として、周囲に存在する他者を認識し、外部へと関わりを築いていきます。
 しかし、なぜ世界には、ただひとつではなく、いくつもの「身体」が存在するのでしょうか。身体の複数性は、ひとつに、生殖機能を持ち合わせていることに起因します。人間は、複数の身体からしか生まれず、現生人類が誕生したとされる約20万年前から、数えきれないほどの身体と身体の営みが堆積した歴史の上に生きています。
 一方、医療技術の進歩により、人間は臓器や血液といったある個人の肉体の一部を取り出し、必要とする別の個人の体に移すことで、複数の人間の身体の一部が内在するひとつの身体を生存させることを可能にしました。また、日常生活におけるデジタル世界の浸透は、個人の身体をヴァーチャルによって複数化させていきました。アバターや、アプリで加工されイメージ化された身体は、現実とは異なる多次元的な様相によって、複数のアイデンティティを形成していきます。

 本展では、身体の複数性をテーマに、身体を起点とした表現を追求する3名のアーティスト、敷地理、庄司朝美、マリオン·パケットを紹介します。敷地は、言葉になる前のコミュニケーションとしてのダンスにより、相手との間に生まれる感覚を、互いの身体に移植させて内在化させることを探究します。庄司は、自身の身体をとおして探る世界を絵画空間に落とし込み、鑑賞者と自身の身体を往来するような絵画体験を生み出すことを試みます。パケットは、公共空間と私的空間の境界を曖昧にし、自己と他者が関わり合いながら共存する集合的身体を浮かび上がらせます。彼らの作品は、互いに影響し合う身体の繊細な関係性や、その多元的なあり方を映し出し、人間が根源的にもつ身体的な想像力やその感受性を再認識させ、新たなる身体の可能性を予感させてくれるでしょう。

※「ACT(Artists Contemporary TOKAS)」は、 トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のプログラム参加経験者を中心に、今注目すべき活動を行う作家を紹介する企画展です。

開催概要

タイトルACT (Artists Contemporary TOKAS) Vol. 7「複数形の身体」
会 期
2025年2月22日(土) - 2025年3月23日(日)
時 間
11:00-19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日月曜日 (2/24は開館)、2/25
会 場
トーキョーアーツアンドスペース本郷
入場料
無料
アーティスト
敷地 理、庄司朝美、マリオン・パケット
主 催公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース

※予定は変更になる場合があります。

アーティスト

《unisex #01》2023 パフォーマンス Photo: Grace LIN

敷地 理|SHIKICHI Osamu

1994年埼玉県生まれ。ブリュッセルと東京都を拠点に活動。
外側から客観的に見ることが不可能な自身の身体やその現実感を、物質的に最も近い他者をとおして捉えることをテーマに、振付やダンスを軸に、パフォーマンス、彫刻的オブジェ、映像表現などを取り入れた作品を制作しています。
本展では、能の演目「井筒」に着目し、劇中で亡き夫の直衣を身に付けた女性が、井戸の水面に自らの姿を映し、そこに夫の面影を重ねて恋い慕いながら舞う舞を題材として取り上げます。その舞に、特定の相手に向けて一対一で踊る官能的なラップ・ダンスを重ね合わせ、自身の振付に関するテキストを下地に、パフォーマティブなインスタレーションに挑戦します。

《23.1.9》2023 キャンバスに油彩 Photo: 加藤 健

庄司朝美|SHOJI Asami

1988年福島県生まれ。東京都を拠点に活動。
「絵を描くことのはじまりにあるのは身体である」という庄司は、「絵画を見る」という経験の中で生まれる身体イメージや感覚を探究しています。半透明のアクリル板やキャンバスを主な支持体とし、あらかじめ完成形を想定せずに、直感的に絵を描いていく制作を特徴としています。
本展では、一連のドローイング作品をメインに、油絵の作品を合わせた数十点の新作を展示します。また展覧会初日には、展示空間内の窓に絵を描くパフォーマンスを行います。庄司自身が、絵の中で描かれる身体の内部に侵入していくかのように、絵を描く自身の身体と、絵画の中の身体の間を行き来することを試みます。

《entre l’instant et la durée》2024 ポリエステル、レザーレット、金属、ポリ塩化ビニル

マリオン・パケット|Marion PAQUETTE

1992年モントリオール生まれ。モントリオールを拠点に活動。
パケットは、表現において、身体や空間、そしてオブジェとの繊細な関係を探るインターフェイスや状況を創出する実践を行っています。テキスタイルや紙など、可塑性のある素材を用いた柔らかな彫刻作品を特徴とし、自分という単一の身体と、周りに存在する他者の身体、相互の関係をとおして変化する身体のあり方や振る舞いを浮かび上がらせます。
本展では、生物の生態系を支える菌類のネットワーク「菌糸体」から着想された、大型のインスタレーション作品を展開します。展示室全体に広がる本作は、舟の帆の布をリメイクした約45 点のオブジェで構成されます。鑑賞者は、作品の中に自由に入ることができ、その身体経験をとおして、パケットは社会というひとつの集合的身体への再考を促します。

助成:ケベック・アーツ・カウンシル

    

関連イベント

オープニング・トーク
日時2025年2月22日(土) 15:00 - 16:30
出演敷地 理、庄司朝美、マリオン・パケット
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料
言語日英逐次通訳

※日程およびイベント内容は、変更となる場合があります。

庄司朝美によるパフォーマンス
日時2025年2月22日(土) 14:00 -
出演庄司朝美
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料(予約不要)

※日程およびイベント内容は、変更となる場合があります。

敷地理によるパフォーマンス
日時2025年2月23日(日) 15:00 -
2025年2月24日(月・祝) 15:00 -
出演敷地 理
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料(予約制)

※1月中旬頃に予約受付開始予定。
※日程およびイベント内容は、変更となる場合があります。

マリオン・パケットによるパフォーマンス
日時2025年3月23日(日) 15:00 -
出演マリオン・パケット
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料(予約不要)

※日程およびイベント内容は、変更となる場合があります。

参加クリエーター

マリオン・パケット
敷地 理
庄司朝美

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