Helena WALDMANN
更新日:2018.11.1
ディレクター/コレオグラファー
ベルリン在住。観客を舞台そでに移動させたり、舞台上に「第4の壁」を作り、舞台の遠近感をゆがめるなどの演出によって、視線(Gaze)の分野研究を実践する。その結果、1993年から1999年にかけて制作した≪Vodka Konkav≫や≪The Malady of Death≫によって、国際的に高い評価を受ける。2000年以降の彼女の政治権力などを扱う演出は、6人のイラン人女性のためにテヘランで制作された≪Letters from Tentland≫や、ヨーロッパ移民政策により国外追放にあったイラン女性を描いた作品≪Return to sender≫など、国外追放や国内の移民の姿を擬態的に映しだすところに起因する。最新作≪BurkaBondage≫は、「lust(渇望)」と「pain(苦痛)」の連鎖を表現し、社会から強制され消滅する身体を描いている。これらの作品は、政治的な前衛演劇として世界的な注目を集めている。
BurkaBondage
≪BurkaBondage≫は、ムスリムの女性が外出時に着用する「ブルカ」と、日本の「縛り」の拘束の中で、自由のために葛藤する2人の女性ダンサーの情熱と苦痛を表現している。晒されることと隠すことそれぞれの極端な例を取り上げることで、ヴァルトマンは、東西の自由と自己解放への切望が極まっていくなかでの権力と無力、苦痛と快楽の二値論理を追求している。
Letters from Tentland
ダンシング・テントのカンパニーと共に、イランでポリティカルなセンセーションを巻き起こした≪Letters from Tentland≫は、外国人女性振付家の作品としては、約30年ぶりに同国で上演された舞台である。ステージダンスが25年以上タブーとされてきた超保守的なアート界に対して、ブロークンな動きと言葉が錯綜するポスト・モダン的な表現を導入した。劇場とは停滞した座談会の場だという考えに支配されていた感情を裸にすることを試みている。