更新日:2023.6.13
参加プログラム | 芸術文化・国際機関推薦プログラム |
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活動拠点 | ベルリン、ウィーン |
滞在都市/滞在先 | 東京 |
滞在期間 | 2023年1月 - 2023年2月 |
ザルツブルク・アルプスの小さな町から始まり、2019年秋のTOKAS滞在時にもリサーチを行った長期的なプロジェクトを東京で発表する。このプロジェクトは、私の家族がオーストリアのアルプス地方で1947年から2003年にかけて営んでいた、HOFERジャケットと呼ばれる圧縮ウールジャケットの製造に特化した毛織物業に関するものである。 このジャケットは現地で独自の製法により作られ、世界中で販売された。日本では特に人気が高く、地元の職人技と世界共通の魅力が融合した製品は「オーストリア・スタイル」と呼ばれていた。
3週間の滞在中、「HOFER TOKYO」と題した個展の開催とその準備を行った。それは、墨田区にあるGallery Dalstonで、2019年秋のTOKAS招聘プログラム参加時にすでに取り組んでいた長期プロジェクトから、既製品、研究成果、画像による空間インスタレーションを構想したものだった。展覧会は、自身の祖父母が1947年から2003年までアルプスのザルツブルクで経営していた、いわゆる「Hofer Janker」と呼ばれる圧縮ウールのジャケットの生産を専門とするニット工場を中心に展開されている。このジャケットは、独自の製法によりその地域のみで作られ、海外における「Hofer」の最大の販売先となった日本では特に人気が高く、1980年代から90年代にかけて、新しい自己表現を求める都会の若者たちに、地域に密着した職人技と世界共通の魅力が融合した特別なアイテムとして支持されていた。「HOFER TOKYO」展の一環として、ファッション社会学者の深町浩祥氏を迎え、このジャケットが当時の日本文化に与えた多面的な影響について、公開トークを開催した。
東京のギャラリーで作品を展示したこと、そして自身がそこにいたことで、現在/未来のコラボレーターたちと再会/巡り会い、さらにつながりを深めることができた。展覧会としての「HOFER TOKYO」は、単に、自身の名前と出自を共有する衣服であり文化財でもあるHOFERジャケットにより、より活発になったオーストリアと日本の歴史的、社会学的、そして(ポップ)文化的な結びつきに関する1年間にわたるリサーチの成果というだけではない。それは、関連する分野の専門家と自身が出会うことができたツールであり、プラットフォームでもあったということを強調したい。そうした専門家たちからさらに学び、彼らとともにこの進行中のプロジェクト「HOFER TOKYO」を継続して取り組んでいく。言い換えると「HOFER TOKYO」に関心を寄せてくれた東京に拠点を置くファッション・デザイナー、ニット製造業者、バイヤー、小売業者、インフルエンサーといった人々と、HOFERの将来を巡る新たな交流を開始している。 滞在中最も印象的だったのは、自身が招待した深町浩祥氏がGallery Dalstonで行ったトークで、HOFERジャケットというアイテムが服飾的な価値だけでなく文化的な価値を持つものであること、そして1970年代後半以降の日本のファッションや文化に与えた影響について多角的に論じたことである。また深町氏は、『装苑』や『ポパイ』など、日本の主要メディアで初めてHOFERジャケットを取り上げた雑誌の写真をリサーチして見つけてきてくれたが、自身はそれらを見たことがなかった。彼のこのテーマについてのリサーチは総じて、このプロジェクトにとって最大級に価値のあるものである。
展覧会「HOFER TOKYO」会場風景、2023年、Gallery Dalston
Photo: Kathi Hofer
展覧会「HOFER TOKYO」会場風景、2023年、Gallery Dalston
Photo: Kathi Hofer