シャオ・ジャーシン

レジデンス・プログラム

リサーチ・レジデンス・プログラム

更新日:2022.11.30

シャオ・ジャーシン

参加プログラムリサーチ・レジデンス・プログラム
活動拠点上海
滞在都市東京
滞在期間2022年9月 - 11月
滞在目的

儀式は移り変わる記号であり、一種の技術である。私たちは常に儀式を必要とし、儀式によって心理的なヒントやある種の認証を得ることができ、それによって自分の限界を超えることができる。アジア地域の儀式の形式は非常に多様であり、人類に共通する文化的要素は、もっと古い時代に共通の起源を持つかもしれない。そのような古代の儀式は現代の日本においても受け継がれ、今日の社会生活の場面でより完全に、より儀式的に保存されてきた。伝統的な儀式と現代の創作活動が相互に関係し合っている理由と背景を探りたい。

滞在プラン
  • 茶会を含めた、日本社会で続く日常の儀式を探る
  • 同様に日々の社会生活で共有されている宗教的な儀式を探る
  • スポーツ競技の作品は東アジアの作家にとって魅力的であり、日本でのオリンピックは日本社会にとって歴史的に重要な意味を持つことから、日本における同様の創造活動を見出したいと考えている。また、これらの作品の背景にある儀礼的な要素も探りたい
  • オンライン/オフラインのフォーラムを開催し、問題意識を収集する
  • 日本のクリエーターとのコラボレーションによる儀式的形式のプレゼンテーションを行う
滞在中に行ったリサーチ及び制作活動

前回の「テセウスの船」の研究に続き、歴史と現代社会の軸を含む、寺院、市場、祭りがもたらす群れが、鑑賞の対象となった。TOKASのレジデンスでは、「Rituals as Method in Japan: Arcades/Machi, Temple and Matsuri/Rituals」(日本における方法としての儀式:アーケード・まち、寺院、祭り・儀式)をテーマに、アーティスト、学者、クリエーター、研究者を招き、その境界線を探るワークショップを3回、各4名で行った。これらの専門家の方々の貢献により、アーケード下の町通(伝統的な市場)での生活が創造的思考で物事を捉えるための方法論となること、経済学や社会構造の観点から見た祭りと近代オリンピックとの類似性、日本における儀式をベースにした創造活動の方法論など、私が思い描く結論を裏付ける証拠を得ることができた。

滞在の成果

建仁寺両足院の副住職である伊藤東凌氏にインタビューを行い、「方法としての儀礼:アーケード/街、寺社、祭り/儀礼」というテーマについて探った。彼は、現代美術家と寺院の交流に深く関わっている。概念としての「禅」がなぜ可能性や創造的思考に関連しているのか、10棟の建物の地理的要素がどのように現代美術に空間を与えているのか、また、どういった経緯でアーケード下の市場での生活が、彼の創造的思考で物事を捉える方法論を生み出し、今の活動に至ったかなどについて話を伺った。さらに、レストラン「Farmoon」と料理サービス会社「キャラバン奈良」を経営し、分野を超えた料理イベントを展開しているアーティストの船越雅代氏からも、さまざまな知見を得ることができた。特に、「Farmoon」を茶室としてとらえ、戦国時代から続く茶道の作法である、新しい客とのつながりを徐々に作っていく。また、パフォーマンスと儀式の境界線についても説明を受けた。
また、9月と10月で異なる祭りを観察したところ、一部の大規模な祭りは、組織作りという点で近代オリンピックのような大規模イベントの特徴を持っていることがわかった。そこで、大規模な祭りを支えるコミュニティの背景にある経済的な論理や文化的なルーツについて、深く興味を持った。TOKASとの共催で、武田俊輔教授(社会学者、法政大学教授)、Jang-Chi氏(アーティストコレクティブ オル太)、東方悠平氏(アーティスト)をゲストに迎え、ワークショップを開催し、このテーマについて強く掘り下げた。
最終的には、キュレーター、アーティストを招き、日本における方法としての儀式をテーマにオンライントークを行った。アムステルダムのアーティストRucha Kulkarni氏は、日本の「拝樹」の儀式と舞踏に基づいたパフォーマティブなプロジェクトを紹介し、ミン・ドゥック・ファム氏(TOKAS招聘クリエーター)は、2ヶ月以上のいけばな講座を経て、いけばな学習において見出した自身の理解を表現した。また、海外のキュレーターであるX Zhu-Nowell氏(グッゲンハイム財団)、Goeun Song氏(WESS、韓国)、熊倉晴子氏(森美術館アシスタントキュレーター)は、日本での儀式的な創造活動の方法論について言及した。

アーティスト兼Farmoonのシェフ、船越雅代氏がFarmoonで料理を作っている様子
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

建仁寺で伊藤東凌氏(両足院副住職)にお話を伺っている様子
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

京都の時代祭りの行列
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

アーティスト・コレクティブのオル太とシャオ・ジャーシン(中央)、オル太のスタジオにて
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

TOKASでキュレーションした第2回ワークショップの様子(武田俊輔教授、Jan-Chi氏、東方悠平氏、石川達紘)
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

TOKASでキュレーションした第2回ワークショップの様子(武田俊輔教授、Jan-Chi氏、東方悠平氏、石川達紘)
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

TOKASでキュレーションした第3回ワークショップの様子(ミン・ドゥック・ファム氏、Rucha Kulkarni氏、X Zhu-Nowell氏、Goeun Song氏、熊倉晴子氏)
2022年、Photo Courtesy シャオ・ジャーシン

クリエーター情報

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