橋本 仁

レジデンス・プログラム

二国間交流事業プログラム(派遣)

橋本 仁

参加プログラム   二国間交流事業プログラム(派遣)
活動拠点日本
滞在都市/滞在先 台北/トレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジ
滞在期間 2019年10月 - 2019年12月
滞在目的

日本統治時代の台湾で生まれ、第二次世界大戦後に日本本土へ引き揚げた日本人(湾生)の記憶を21世紀に生き湾生の祖母を持つ私の視点で辿り直す。湾生の人々は日本への引き揚げ時に何も持っていくことが出来なかったため、現存する写真は全て当時の日本人が摘発のリスクを抱えて持ち帰った貴重な品である。彼らにとって台湾とはどういった場所だったのか本当に理解することは難しい。
そして2019年には戦後74年をむかえると同時に、記憶を保有する湾生の人数は年々少なくなっている。 今回の滞在では、家族のルーツそして湾生の人々の記憶についてより深く調査し、その記憶に向き合いながら、2つの国そして過去と現在を繋ぐような作品を制作し、展覧会を開催したいと考えている。

滞在中の活動(計画)

・(出発前)日本に住む湾生の人々に取材し、台湾時代に思い出に残っているモノもしくは場所を思い出してもらう。現地でそのモノ(類似品も可)または場所を探し出し、撮影。記録または記憶写真をベースに木彫と組み合わせて作品を制作する。
・台湾に残った日本人に取材し、上記同様、日本統治時代の思い出の品を預かり、撮影、木彫を重ねた作品を制作する。
・台湾に残されたいくつかの日本統治時代の建物の過去の写真を探し出し、大型パネルに印刷。表面に格子状に木彫を組み合わせる。ちょうど建物の写真自体が半分くらいしか見えない状態で、記憶が徐々にぼやけて消えいくような作品を制作。
・日本統治時代の日本人と台湾人の割合(人口推移)を入手し、その数字の推移をベースに作品を制作する。
・引き揚げ日本人の港別出航者数(3つのメインの港)をグラフ化し、その数字の推移をベースに作品を制作する。 

滞在中のリサーチ及び制作活動


10月7日-11月29日においては制作にのみ集中した。(展示準備まで約1カ月半)展覧会開始後、12月は主にリサーチとして高雄、台南、基隆、台北市内へ赴き、幾人かの助けを借りて親族3代の足跡を辿った。それぞれ、協力者の情報を頂き単独もしくは同行してもらい、当時日本人の住み暮らした地域や親族が実際に活動していた場所、葬儀の行われた寺などを見て回った。また、親族最初の者の渡台に関するエピソードの収集や当時の暮らしぶりその人物列伝など台湾日々新報から抜粋した記事をデータ入手した。同時に研究者に同行する形で台湾帝国大学出身者、台湾人2名の話をお聞きした。また、今回渡台する前に親族はもちろん、湾生、映画監督、研究者各1名ずつ話を聞いた。 台湾における日本統治時代についてはオーラルヒストリー含め既に膨大な書籍や研究報告が成されているため、テキストでは伝えられない形での表現を試みた。自身がリサーチを通じて会得した、「体感により歴史の断層が織りなす空間を認識する行程」を展示空間において再現した。

リサーチと展覧会は順番が前後しているが、既に何度か台湾へ来ていることと渡台前のリサーチが功を奏し感覚と想像と実績が実を結ぶ展覧会となった。それがどれだけの人間の心を具体的に動かしたかは実際には計り知れないが、台湾人も日本人も自身が感想を聞くことができた人達には皆好評であった。協力者の幾人かは展覧会のオープニングで知り合った方々であり、その方々の心に響き協力を自然発生的に得られたということが何よりもの証左であり、展覧会の手ごたえである。 また、展覧会のオープニングには90歳を超える祖母も日本から来てくれた。台湾との縁故がこの地に刻まれていることを心から有難いと思うと共に、戦争、統治、敗戦、引揚から二股に別れ白色恐怖の時代と高度成長を果たした二国が今また互いに手を結ぶことに感動を禁じ得ない。

滞在の成果、反省点、今後の活動の展望

滞在の成果は何より自身のルーツについての明確化と台湾、日治時代への理解が深まり、人の繋がりが作れたこと。反省点は語学面と会場における展示内容への説明不足。今後の活動については、今回得た繋がりを基盤としより一層の「時間を跨いだ全体と部分の関係における特異点の割り出しから現在への視座を提示する」ことを目標に、大きくは「愛と平和と環境保全」、「東アジアにおける孤立化の修復」に現代を生きる一人のアーティストとして貢献していきたい所存です。

「Memory Code – Accumulation」Soil block, wood, acrylic painting、2019

「Memory Code – Accumulation」Soil block, wood, acrylic painting、2019

「Memory Code - 高雄港 1946」Carved acrylic painting on wood, inspired by the statistic on Japanese repatriates returned to Japan by Kaoshung port from March to April 1946、2019

「Memory Code – 基隆港」Carved wood placed on the picture of Keelung port、2019

「Memory Code – 基隆」Carved acrylic painting on wood、2019

「Memory Code」Carved wood, soil blocks (Taiwanese soil, lame, bittern)、2019

クリエーター情報

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