更新日:2019.11.21
参加プログラム | 二国間交流事業プログラム(派遣) |
---|---|
活動拠点 | 日本 |
滞在都市 | メルボルン |
滞在期間 | 2011年4月 - 2011年6月 |
"Art&Breakfast,Melbourne"はモナッシュ大学に三ヶ月間の滞在をしながら展開される進行中のプロジェクトで、これまでも2006年から2010年にかけてストックホルム、東京、ベルリンにおいて開催されて来た。このプロジェクトは三田村が毎朝朝食を作り来場者とともに食べることで始まり、展示空間で時間を過ごしながら即興的な一連の小さなインスタレーションを毎日制作し続ける。これらの一時的で手作業のインスタレーションには儚い記憶や感情の営みが反映する。この展示会の構成は親密な交流を可能にし、空気感や自由でナラティブな日常の舞台が芸術家と来場者の間に築き上げられ共有される。
ここでは、私は輸送や施行といった、通常の空間造形にいつもつきまとう色々な制約やストレスから解放され、遠くから運んで来た作品を一方通行で見せるのではなく、そこに身を置きながらドローイングのように自由なインスタレーションを行なうことは、私の作品のテーマの根底に対して、より深いフィードバックを可能にする。
滞在制作によるプロジェクト"Art&Breakfast"というタイトルはB&B (Bed & Breakfast)に由来し、文字通り、滞在しながらアートを作りだす「朝食つきの滞在制作」という造語。"Art&Breakfast"は朝食を来場者と食べる事から始まり、旅の中で積み重ねられたイメージや記憶、コミュニケーションに基づいて私がいる場所で見つけたものからアートワークを作成し、無数の小さなインストールがスペースを覆って行く。出来上がったインスタレーションは、そこで生まれるビジュアルや言葉を写真及びビジュアルブックとして抽出し、展覧会終了後に新たな作品として普遍的で広く共有可能な形状にアウトプットする。
・モナッシュ大学 アート&デザイン ランチタイム フォーラム
2011年4月20日:モナッシュ大学内レクチャーホールにて、大学内外のビジターに向け、アーティストの制作活動、およびモナッシュ大学美術館での滞在制作について、ビジュアル資料を解説しながらのプレゼンテーション。
・モナッシュ大学美術館(MUMA)展覧会
・Art & Breakfast 展
・Danius Kesminas 展
・Slowness 展
・合同オープニング
5月7日:3つの展覧会の同時開催にあわせ、合同オープニングレセプション
Danius KesminasのコラボレーションプロジェクトSLAVE PIANOS、PUNKASILA 、PIPELINE TO OBLIVION
モナッシュ大学美術館のコレクション展 Slowness 同時開催
2011年ベネチアビエンナーレ、オーストラリア館コミッショナーDoug Hall氏、モナッシュ大学美術館長Max Delanyによるスピーチ&レクチャー。
・Art & Breakfast展 イベント Breakfast
モナッシュ大学美術館、展示会場にて、5月10日、14日、17日、24日、31日、6月4日
上記6日間の日程で、火曜日朝9:30−11:30 土曜日11時−12:30
鑑賞者が自由に参加出来るビュッフェスタイルの朝食会。
平均して各日、約20名が参加
・モナッシュ大学Gippsland キャンパス アート&デザイン科レクチャー
7月5日--19日 モナッシュ大学 アート&デザインギャラリー
CARE オーストラリア−日本 災害復興支援 チャリティープロジェクト展
http://www.artdes.monash.edu.au/gallery/gravity/
モナッシュ大学に関わりの深い30名のアーティストの作品を写真プリントにして展示販売。
・リサーチ及び制作活動
[シドニーリサーチ&美術施設訪問]
Artspace Sydney http://www.artspace.org.au/
キュレーターコンタクト;Tracy Burgess、Mark Feaby
The Asia-Australia Arts Centre (Gallery 4A) http://www.4a.com.au/
キュレーターコンタクト;Aaron Seeto
Art Gallery of New South Wales http://www.artgallery.nsw.gov.au/
キュレーターコンタクト;Anneke Jasper
[新作制作]
メルボルン St.Kilda 地区にある古くからの遊園地LUNA Parkをテーマに写真、ビデオ作品制作。
・滞在成果
滞在、制作、交流、展示のすべてが、とても好感触で成功裏に終わった。大学の受け入れ態勢、キュレーター、美術館スタッフ、ボランティアスタッフともに反応が早くスムーズで、ストレスの無いプログラムだった。
今年からArt&Designキャンパスに新築された美術館ということ、またメルボルンの世界的に活躍するアーティストの展覧会との同時開催ということで注目度も高く、広く沢山の鑑賞者に見て頂ける好機となった。
また、多くのプラグラムのように滞在の最後に展覧会があるのではなく、早い段階で展覧会がオープンしたことで、作品を通して興味を持ってくれたビジター、作家、学生、美術関係者などとコミュニケーションの機会をもてる時間が充分にとれたこと。また、作品を通しての信頼を美術館のキュレーターやスタッフの人々との間に築く事ができたこと。
・反省点及び改善点
展覧会場の詳細、同時開催の展示について事前の情報収集が不十分だった事。
レジデンススタジオではないので、他に作家がおらず、現地の作家との交流が比較的少なかった事。
また、制作準備に対しての相談者がはっきりしていなかったので、材料調達にあたり、個人的な現地協力者のアシストに頼る部分が大きかった事。この部分に関しては作家の作品形態にもよるが、自国での制作で通常、作家側で準備すべきことを、滞在制作では初めての国や土地で短期間に準備しなければならないため、キュレーター以外に、制作についての相談者(現地のアーティストまたは展示スタッフ)がはっきりしているとよいと思う。
・今後の活動への影響
未曾有の災害直後の渡航、制作展示というこれまでに経験のない状況下で、作家として何が重要か、また自分にとってリアリティのある表現は何かについて深く考えさせられる滞在だった。そういった意識の変化の中でも、自分の表現の中で変わらないメッセージは何かを再確認することができる機会となった。
また、オーストラリアという欧米のアートの文脈から離れた地理的条件での初めての制作発表は、アートの本質を考え直すタイミングになった。
・滞在中もっとも印象に残ったエピソード
朝食を通して、沢山の出会いとコミュニケーションの輪が生まれた。
例えばドイツのキュレーターの紹介でたまたまメルボルンを訪れていたニューヨークのキュレーターが朝食に参加し、その知人で数年前にメルボルンに移り住んだフルクサスのアーティスト、ケン・フリードマン氏が関心をもってコンタクトをくれた。
また、アーティストトークに来てくれた生まれつき身体に重度の障害を持つアートウォッチャーの女性に、「とても心に響く作品だった。そういう作品に出会う事は少ない。」というメールをもらい、非常に勇気づけられた。
・リサーチや滞在制作を通して、「滞在国」や「派遣都市」に対する意識の変化や新しい視点について
オーストラリアは、歴史的には英国から入植された国であるが、そのことが地理的に非常に特殊な環境を創り上げているのを実感した。白人社会ではあるものの、地理的にはアジアに最も近く、文化的、人種的には英国起源あってもメンタリティは欧州よりもアジア人に近い印象を受けた。とくに日本人とはかなり空気の読み方が似ていると感じた。
その中でもメルボルンは特に、移民が多く、文化の融合が進んでおり、オープンマインドで付き合いやすい人々が多いと感じた。また、カルチャー面ではエッジな街として名高いようで、これもシドニーとは違う印象だった。デザイン性の高いアートやカルチャーのインディペンデントマガジンもメルボルンで出版されている。
欠点はやはり、すべてにおいて、欧米から遠いことであり、欧州のような歴史的な重みがすくないことからも、現代アートのコンテクストに乗り切れない部分が否めない。良い点は欧米から遠い事で、海外評価に頼らない、独自のカルチャーとマーケットを持っていること。
活動が掲載された媒体(新聞、雑誌、HP等)
・月刊 ASIA That's residential
・新聞 The Age 5月4日
・http://www.rococoproductions.com/500/500_052.html
・https://lamblegs.wordpress.com/tag/midori-mitamura/
・http://www.threethousand.com.au/eat-drink/midori-mitamura-art-and-breakfast/
・http://www.broadsheet.com.au/melbourne/arts-and-entertainment/article/art-breakfast
・http://www.asialink.unimelb.edu.au/video/culture/midori_mitamuras_art_and_breakfast
Art&Breakfast ,Melbourne
2011 mixed media, Installation made of Photos, found materials, music