【TOKAS本郷】OPEN SITE 5 実施企画決定!

あらゆる表現活動が集まるプラットフォームの構築を目指し、2016年より始まったトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の企画公募プログラム「OPEN SITE」の2020年度実施企画が決定しました。 今年3月から4月にかけて実施した公募では、国内外から161企画が集まり、書類審査と面接審査を経て展示部門4企画、パフォーマンス部門3企画、dot部門2企画を選出しました。さらにTOKAS推奨企画を加え、2020年11月から2021年2月まで2会期にわたり開催します。ジャンルを超えた創造の場にご期待ください! 

実施企画

展示部門

開館時間内(11:00~19:00)であればいつでも入場できます。予約不要、入場無料
会期初日には公募審査員をゲストに迎え、オープニング・トークを実施します。

Part 1|2020年11月21日(土)~12月20日(日)

企画者 大岩雄典
企画名 「バカンス」
〈インスタレーション〉と〈ステートメント〉を、それぞれ時空間を編集する技術、パーティの意味を組織する技術と解釈する。これら二つの営為を結びつける〈キュレーション〉を加えた三つの概念を、現代社会・政治のひとつの「形=比喩」として考察し、提示する。

企画者 権瓶千尋+森岡美樹
企画名 「声になるまえ(仮)」
言葉は何かを明らかにする一方で、何かを隠してしまう、という問題を共有する二人のアーティストによる展示。ことばによって定められる前の思考や現象は、一体どんなかたちをしているのか。現代社会における「ことば以前」を模索する。

Part 2|2021年1月9日(土)~2月7日(日)

企画者 上村洋一、黒沢聖覇、髙木遊
企画名 「冷たき熱帯、熱き流氷」
オホーツク海の流氷の調査と制作を行う上村と、ブラジルのアマゾン地域の自然環境や文化をリサーチした黒沢が、対極する互いの調査対象を統合することで、惑星規模のエコロジー危機において現代社会で失われつつある感性を高め新しい環境観を志向する共同調査・制作プロジェクト。共同キュレーションを髙木が務める。

企画者 飯沼 珠実
企画名 「建築のことばを探す 多木浩二の建築写真」
評論家の多木浩二が「建築について書くためのメモ」として撮影した建築写真について、アーティストである飯沼が2017年より開始した研究調査のリサーチ発表展。長年、未発表だった多木の数多くの写真を敢えて公開する行為をとおして、対話の場の創出を目指す。

パフォーマンス部門

各会期中、特定の日時に上演します。鑑賞には事前予約と入場料が必要です。
実施日程や入場料金、予約方法等の詳細は、後日TOKASのウェブサイトおよびチラシにて発表します。

Part 2|2021年1月11日(月)~1月17日(日)
企画者 どうぶつえん(代表:Aokid)
企画名 「どうぶつえん 2016~2020 in TOKAS(仮)」
出演者  Aokid、たくみちゃん、米澤一平、濱田明李、朴 建雄、武田 龍 他
さまざまなジャンルのアーティストが公園内を移動しながら、その場に居合わせた人たちをも巻き込んでパフォーマンスやワークショップを行う「どうぶつえん」。2016年以降、代々木公園を中心に10回以上実施した記録を振り返り、今後の活動の可能性を考える複合的イベント。

Part 2|2021年1月26日(火)~1月31日(日)
企画者 ブルーエゴナク(代表:穴迫信一)
企画名 「Coincide 同時に起こること」
出演者 ブルーエゴナク 他
穴迫が東京、京都、北九州の各地で俳優と滞在制作をしながら、個別の記憶や風景をもとに創出する各一編のテキストから、言語によるドラマの誘引性とその可能性を検証、発表する。

Part 2|2021年2月2日(火)~2月7日(日)
企画者 y/n(代表:橋本 清)
企画名 「セックス/ワーク/アート(仮)」
出演者  橋本 清、山﨑健太
自らの身体を媒体とした客とのコミュニケーションを仕事とする俳優とセックスワーカー。二つの職業の共通点と差異から、金銭を介した観客との関係を問い直すレクチャーパフォーマンス。


dot部門

会期中、特定の日時に実施します。事前予約の有無は企画により異なります。入場無料

Part 1|2020年11月23日(月)~11月29日(日)
企画者 「パレイドリアン」(代表:鐘ケ江織代)
企画名 「聴衆のいない演奏会―転倒する<作曲・演奏・聴取>」
出演者  山本和智、眞崎光司、鐘ケ江織代
参加者に現代音楽の不可解さを積極的に提示することで、各自が困惑、葛藤しながらも音楽作品への向き合い方を見出し、その魅力に触れる機会を創出するワークショップ。

Part 1|2020年12月15日(火)~12月20日(日)
企画者 「Back and Forth Collective」(代表:滝 朝子)
企画名 「Women in Acts / Lives / Customs(仮)」
出演者  坂本夏海、滝 朝子、本間メイ
社会的トピックと日常の繋がりに関心をもつメンバーからなるコレクティブ。特に世界各地のジェンダー/フェミニズムに焦点を当て、アーティストたちのアプローチ方法を紹介し、今後のコレクティブのあり方を模索する。

TOKAS 推奨プログラム

開館時間内(11:00~19:00)であればいつでも入場できます。予約不要、入場無料。 

Part 1|2020年12月1日(火)~12月13日(日)

企画者 クロエ・デランヘ Chloë DELANGHE(ベルギー)
企画名 「Minnebrieven(ミネブリーヴェン) (Love letters)」
2019年TOKASレジデンス・プログラム参加クリエーターのクロエ・デランヘが滞在中に制作した映像作品を発表する。日本の都市部に生息する動物と人間との関係性をテーマに、ドキュメンタリーのようなかたちで生き物の肖像を描くことで、カメラの媒介性や孤独、疎外感、愛について探究する。

募集概要

募集期間
2020年3月3日(火)~3月24日(火)
応募総数
161企画
審査員小林晴夫(blanClass ディレクター)
畠中 実 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)
久野敦子(公益財団法人セゾン文化財団 プログラム・ディレクター)
近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラム・ディレクター)

審査員による講評

■小林晴夫(blanClassディレクター)

今回初めてOPEN SITEの審査を担当することになったが、多様で挑戦的な企画が多く、全部にチャンスをあげたくなり、また新型コロナウィルス感染対策の影響で、二次審査のリモート面接などを含め、審査自体の難しさもあいまって、最後まで悩んでしまった。全体の印象は、それぞれ企画者たち自身の芸術がどういう形式やバックグラウンドを持った表現なのかを悩みつつ、現状の社会やそこにある問題にいかにコミットするのか?あるいはそれだけで良いのか?というジレンマを感じさせる企画が多かったのだが、その中でも最終的には、これまであまり見たことがないような珍しい題材、アプローチ、方法をとっている企画が選ばれたと思う。実際の発表では、きっと新型コロナウィルス感染対策の影響下にあり、実現するには企画者たちそれぞれの工夫をしなければならないだろう。そのことも含めて、今回のOPEN SITEの意義が発揮されたらと願う。


■畠中 実 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)

今回のOPEN SITEは、都内だけでも多くの美術館が臨時休館を始めた、新型コロナウィルス禍の中で公募が行なわれた。そのことも少なからず応募企画に影響を与えていただろう。このような局面で、応募者、主催者、審査員、すべての関係者に、その状況下で、どのような条件で実施が可能かということが考えられていたにちがいない。もちろん、それは現実的な開催条件だけではなく、内容としても少なからず影響を与えたであろう。一方で、それだけではない、現在的な問題を扱ったものが多くみられた。現在の状況に芸術が、なんらかの前衛的なアプローチや、制度的なもの、歴史的なものへの再検証によって、どのような提起が可能かを考えさせられるものが多くなっているのは近年の傾向ではある。その中で、個人的には、企画がいかに破綻なくまとめられているか、ということが評価の軸となった。結果、そのさまざまな傾向が、それぞれ異なる方法で実現されるであろう企画が選ばれた。


■久野敦子(公益財団法人セゾン文化財団 プログラム・ディレクター)

今期のOPEN SITEの公募は、コロナウイルスの感染拡大時期と重なった。申請者にとっては、自身の問題設定に揺さぶりをかけられ、悩みながらの企画書作成だったに違いない。同様に、審査も困難なものとなった。締切から審査会当日までの一か月に状況は毎日変化し、従来の物差しは使えないと感じたからだ。 企画書にあった移民、ジェンダー、アイデンティティ、気候変動、エコロジー、弱者、モビリティ、震災などの問題は、全てウイルスを抜きに語ることができなくなった。予測不可能な状況下で、申請企画の、柔軟性や実現性、展示/上演の方法について検討することは難しかった。 アーティストは、再び「アートに何ができるのか」を問われている。採択アーティストには、申請の時点からすでに大きく変わり、これからも刻一刻と変化していく社会に向き合い、さらに思考を深めた試行錯誤の結果を、展示/上演で見せてくれることを待っている。


■近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラム・ディレクター)

今年度は、結果として国内企画者のみの選出となった。現在の情勢を鑑み、数か月先の状況を考慮したうえでの判断では決してないが、足元の不確かさは、企画の内容と形式の両方に対する評価にこれまでとは違う影響を、少なからず与えていたのではないかと思う。とはいえ、選出された企画は、ローカルな問題に基軸をおく企画からトランスボーダーな視点を内在させる企画まで、閉じられた世界にいてもなお、広い視野で洞察しようとする。現代の表現の多くは、同時代の事象に呼応するが、それは今ここにある現状にだけ薄く反応しているのではなく、それらを飲み込みながらも、それぞれの変わらぬ問いを発し続ける。先の見えない中で、ある確かさに触れることができるのが、表現であり、またそれについて考えることなのではないかと、審査を通じて改めて感じた。

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