鳥がさえずり、山は動く

TOKAS Project

鳥がさえずり、山は動く

TOKAS Project Vol. 7

都市の周縁が持つ可能性を問う展覧会

TOKAS Projectは、国際的な交流を促進し、多文化的な視点でアートや社会など多様なテーマについて思考することを目的に、トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)が開催しているプログラムです。7回目となる本展では、2023年にTOKASのキュレーター招聘プログラムに参加したアヨス・プルウォアジを共同キュレーターに迎え、インドネシアと日本のアーティストの作品や彼らの活動を紹介します。

日本ではパンデミック後、首都圏への人口流入が拡大し、東京の一極集中が再び強まりを見せています。一方インドネシアでは、交通渋滞や大気汚染、地盤沈下などを理由に、2024年から段階的に首都をジャカルタから約2000km離れたカリマンタン島東部に位置するヌサンタラへ移転しようとしています。都市はさまざまな権力が集中し、多くの人や物が集まる場所として人々を魅了してきました。しかし現在、世界各地でその綻びが生じていることは否めません。

本展では、インドネシアと日本の社会的変化を端緒として、都市を離れ地方で活動を続けるアーティストに焦点を当てます。地球の生態系の中で重要な役割を担っている鳥のように、地域に根差した活動をとおして生み出される彼らの作品は、さまざまな場所で種を芽吹かせ、山をも動かすような力強さを見せてくれるでしょう。

開催概要

     
タイトルTOKAS Project Vol. 7「鳥がさえずり、山は動く」
会 期
2024年10月5日(土) - 2024年11月10日(日)
時 間
11:00-19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日月曜日(10/14、11/4は開館)、10/15、11/5
会 場
トーキョーアーツアンドスペース本郷
入場料
無料
アーティスト尾花賢一
プレワンガン・スタジオ
ランガス・ウェンギ
共同キュレーターアヨス・プルウォアジ
主 催公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース
後 援駐日インドネシア共和国大使館

参加アーティスト

《森の奥、そして》 2018 ワトソン紙にインク、ジェルトン
撮影:草彅 裕  

尾花賢一|OBANA Kenichi

人々の営みや伝承、土地の風景や歴史にもとづく作品を制作する尾花は、江戸時代に長崎で生まれた物語『じゃがたらお春』をモチーフにした新作インスタレーション《遠く、眺める/じゃがたらお春の物語》を発表する。キリシタンの取り締まりが強化するなか、混血であることを理由にジャカルタに追放されたお春は、これまでさまざまなメディアで「悲劇の人」として描かれてきた。しかし近年の研究で、お春はジャカルタで商売に成功し、自らの意志で人生を切り拓いていったことが分かってきた。ドローイングや彫刻作品で構成される本作では、ジャカルタに渡ったことで封建的な支配から解放されたお春の物語を起点に、日本社会における制度や価値観を問い直す。

映像制作:三泊三日

[プロフィール]
1981年群馬県生まれ。秋田県を拠点に活動。2006年筑波大学大学院芸術研究科油絵専攻修了。
主な展覧会に「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」(まつだい郷土資料館、十日町、新潟)、「多摩川ジオントグラフィー」(調布市文化会館たづくり、東京、2024)、「国際芸術祭あいち2022」、「VOCA展2021 現代美術の展望―新しい平面の作家たち―」(上野の森美術館、東京)、「表現の生態系」(アーツ前橋、2019)など。
主な受賞歴に「上毛芸術文化賞」(2022)、「VOCA賞」(2021)、「Tokyo Midtown Award 優秀賞」(2015)など。 

《Grumbul Pangkalan Dimar》 2022 木、鉄、アルミニウム、レジン、ガムラン、アルドゥイーノ、電子部品

プレワンガン・スタジオ|Prewangan Studio

プレワンガン・スタジオが拠点を置くインドネシアのトゥバンは、東ジャワ州の北海岸に位置し、セメント工場や石炭火力発電所、インドネシア国営石油会社プルタミナが運営する施設など、大企業の工場に囲まれている。また、この地域では海の支配者である「デウィ・ランジャール」の神話が伝わり、富を得ることを目的にマントラを唱えながら黒色の供物を海に投げ入れる儀式が行われている。
本展では、トゥバンの海に浮かぶ石炭運搬船とこの儀式に類似する「黒の代償を伴う富の追求」から着想し、伝統的な供物台を再解釈したインスタレーション《ペスギハン・デヘット・ケムクス》を発表する。立体作品を中心に映像やサウンドを組み合わせ、「デウィ・ランジャール」の儀式をとおして現代の産業活動を考察する。

[プロフィール]
インドネシア第2の都市スラバヤから西に約100km、東ジャワ州の北海岸に位置するトゥバンを拠点に活動。DIY精神でモノや製品を創造、開発、実験することに重点を置く、市民主導のオープンで協力的なコミュニティ。
メンバー:インドラ・プラヨギ、シャイフル・アフマド・クルディアントロ、ブンタス・プラドト、イルマル・ヤキン、アディアンサ・トアト・サプトロ、モッチ・リコ・プラムディア

《Naga Bencana》 2023

ランガス・ウェンギ|Rangas Wengi

ランガス・ウェンギが活動を行うインドネシアのパティ県スコリロに伝わる芸能をリサーチし、「タユブ」というダンスパフォーマンスに着目。タユブには「調和を保つために組織された」という意味があり、スコリロの民俗芸能の証人であるムバ・マディがよく参加していたという。
本展では、治安情勢が不安定なスコリロの現代社会に警鐘を鳴らすように、他者を尊重し繁栄を願うタユブの規律を取り入れた立体作品を発表する。

[プロフィール]
2021年よりインドネシアの中央ジャワ州パティの農村部スコリロを拠点に活動。現代アートと伝統的な美学を融合させながら、農村の日常生活にもとづいた作品を制作するアート・コレクティブ。
メンバー:バグースサティア、ヌルル・ドゥウィ、イクバル・ハヴィッド、ケヴィン・アディティヤ

共同キュレーター

アヨス・プルウォアジ|Ayos PURWOAJI

歴史、建築、視覚芸術の分野で横断的に活動するキュレーター。2015年から多くの展覧会やキュレーション・プロジェクトに携わる。ヴァナキュラー・アーカイビング(その土地固有の文化の収集・保存)と集合的記憶の実践に関する活動も行う。スラバヤ現代遺産協議会(SCHC)を共同設立し、文化遺産に関する批評的な言説を研究する。

[プロフィール]
1987年ジェンベル(インドネシア)生まれ。スラバヤを拠点に活動。2013年ITSスラバヤ工科大学産業プロダクトデザイン学科卒業。
東ジャワ・ビエンナーレ(2023)ディレクター。主なキュレーションに「Jakarta International Photo Festival」(Blok M、ジャカルタ、2022)、「目に見えないものとの交渉」(九州芸文館、福岡、2022)、「ビエンナーレ ジョグジャ XVI」(ジョグジャ国立博物館、インドネシア、2021)など。2023年度キュレーター招聘プログラム参加。

関連イベント

アーティスト・トーク
日時2024年10月5日(土) 15:00-16:30
出演尾花賢一、プレワンガン・スタジオ、ランガス・ウェンギ、アヨス・プルウォアジ
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料
言語日英逐次通訳

トーク・イベント「インドネシアに渡った女性たち」
日時2024年10月14日(月・祝) 15:00-16:00
出演尾花賢一
本間メイ(アーティスト/Back and Forth Collectiveメンバー)
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料

参加クリエーター

アヨス・プルウォアジ
プレワンガン・スタジオ
ランガス・ウェンギ
尾花賢一

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