トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバルVol.9 ―TEFパフォーマンス <推奨プログラム>
タイトル | タナツ・モダバー&ピエール・ムルレ「Harmony for Vanishing Points」
トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバルVol.9 ―TEFパフォーマンス <推奨プログラム> |
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会 期 | 2014年11月7日(金) - 2014年11月8日(土) |
入場料 | 1200円 |
主 催 | 公益財団法人東京都歴史文化財団トーキョーワンダーサイト |
会 場 | 両国門天ホール |
アーティスト | タナツ・モダバー、ピエール・ムルレ |
スクリーンにゆったりと流れる木炭ドローイング× 8ch サラウンドによる
ドローン音響が、イマーシブな(没入型の)時間・空間を創り出す!
イラン、フランスのルーツを持つ、タナツ・モダバーとピエール・ムルレは、「脱・物質化」というコンセプトを自らの出身に関連づけている。「Harmony for Vanishing Points」というこのパフォーマンスにおいて、「脱・物質化」の過程は、プジェクションによって映し出される、水平方向に曲がりくねった線で構成された木炭のドローイングの変換で始まる。彼らの国の伝統楽器であるセタールとアコーディオンを音響手段として用いて、痕跡のないイメージを捕らえ、音のみを残していく。
パフォーマンスで象徴的に用いられるこの2つの楽器は、その生の音だけでなくコンピューターの変調システムによって拡張・変調されて鳴り響く。8チャンネル・サウンドシステムを通して、アコースティックな楽器と電子ツールの両方が空間における音の圧縮と拡張を可能とする。作品は、ドローイングの中に見られる、螺旋状や不整脈のような不規則なパターンに支えられながら展開していく。それらは、伝統的な調性関係とは無関係の、複雑な組み合わせのハーモニーを探求する。
1. E-mailまたはFaxにて予約を受付けます。
E-mail: ticket@tokyo-ws.org / Fax: 03-5602-9882
2. 氏名、電話番号、ご希望の公演名、日時、人数をご記載のうえ、件名を「フェスティバル申込み」としてお申込みください。
3. 代金は公演当日会場にてお支払いください。
4. 各公演とも定員になり次第、あるいは、公演前日の17:00をもって予約受付を終了します。当日券の有無は、 こちらのページでご確認ください。
※プログラム内容や出演者はやむを得ず変更される場合がございます。予めご了承ください。
/テヘラン(イラン)生まれ。カリフォルニア州立大学バークレー校にて造園及びアートを学ぶ。同大学院にて修士号(建築)取得。サイトスペシフィックなインスタレーションや、小規模な建築作品等を制作している。西洋のクラシック音楽、イラン古典音楽の両方を勉強した経験は、彼女の時空間領域へのアプローチや、「非・物理的な」空間への取り組みに反映されている。
/フランス出身のミュージシャン・作曲家。コンテンポラリー・ダンスの分野で活動を始める。パンタン音楽院にて電子音楽、ARPEJ音楽学校にてジャズを学ぶ。パンタンでの電子音響音楽の卒業制作によりSACEM(※フランスの著作権管理団体)賞を受賞。彼の音楽実践は、コレオグラフィー(振付)が叙述性と抽象性の間、生の感覚と拡張したメタファーの間をどう舵取りするかというような関心事と密接に結びついている。コンサート、サウンド・インスタレーション、映画やダンス公演のためのサウンド・デザイン等幅広く活動し、フランス国外にて作品を発表している。
タナツ・モダバー(from タナツ・モダバー&ピエール・ムルレ)
昨年のTEF Vol.8にて特別賞を受賞し、今回推奨プログラムとして「Harmony for Vanishing Points」を再演。
―お二人は普段は別々に活動し、別々の場所で暮らしていますが、二人で活動することが個人活動とどんな違いを生むのでしょうか?
私たちは、物理的に離れていることが制限や制約だとは思っていません。コミュニケーションを十分に取ることが不可欠ですが、今はインターネットがあります。時折パリかベルリンで実際に一緒に作業しますが、私たちはまずプロジェクトの別々のパートから取り掛かり、それぞれが別々に準備を進め、実際に会った時に、それぞれのパートを合わせて、ひとつにまとめます。ちょうど織物を仕上げるような感じで、二人の知識を合わせて織り込んで、どうやったら一貫したひとつの作品ができるのかを考えます。ピエールも私もこのような挑戦を楽しんでいますし、これはひとつのコラボレーションの形のように思います。
― Harmony for Vanishing Pointsでは、「脱・物質化(de-materialization)」 がキーワードとなっています。この概念を説明してもらえますか?
「脱・物質化」とは「翻訳」のプロセスです。再定義された概念、メディア、あるいは物体のことで、それらが別の形で表現されること、つまり、新しい存在形態を取り入れ始めるということです。このプロセスでは、次元、規模、感覚の変化が起こり、新しい状態に到達します。基本的に、「翻訳」の手段としてマッピングを行ないますが、それは私が「建築」と呼んでいる、キネティックな模型、3次元のオブジェから始まります。この模型の動きをマッピングした後、長さ20メートルほどの直線的なドローイングに描き写したものが、演奏のための楽譜となります。さらに次の段階でこのドローイングをマッピングし、パターン、輪郭、線、点、ニュアンスを抜き出して音に変換します。私たちの定義する「脱・物質化」とはこういうことです。
また、「脱・物質化」には私たちのルーツと関連して、もうひとつ意味があります。音響を創り出す上での象徴的な手段として、フランスのアコーディオン、イランのセタールという、それぞれの国の伝統楽器を使っていますが、私たちは楽器本来の力を保ちつつも、伝統的な演奏実践から「脱・物質化」して、それらの楽器を用います。
―スクリーンに投影されるドローイングの前に構造体があるんですね。
はい、観客のみなさんはそのオブジェを目にすることはありませんが。私たちはこの過程を次元の変化とも捉えています。3次元のオブジェが2次元となり、ドローイングから音に変換される際に更に次元が変化しますが、これは作品の規模の変化とも言えます。
―ドローイングから音楽へと「翻訳」する際に、法則やシステムはありますか?
私たちはコード(符号)を作りました。ドローイングの中にパターンを見つけ、それをコードに適用します。したがって、この音楽を再演することが可能なのです。演奏には直感的な部分があり、即興も含まれるので全く同じというわけにはいきませんが、私たちにとって明確な構成はあります。
―今回のパフォーマンスの見どころ・聴きどころを教えてください。
この公演は会場に直に結びついたパフォーマンスで、8ch音響システムにより、音が会場内を動き回るような演出となっています。文字通り、会場内が音の内側となります。つまり、観客と私たち演奏者のいる状況は音に内包される感じで、私たち演奏者と観客の存在が一体となります。その辺りがこの公演のハイライトだと思います。
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