MIYAUCHI Yasuno
更新日:2010.8.1
プログラム・ノート―宮内康乃≪波紋 Ⅱ≫(2004, 改訂2009)
[clarinet, percussion, electronics, film]
この作品は、音の響きの余韻や、音と音の「間」を特に表現したいと思い、作曲した。従って、フレーズやリズムではなく、音による空間上の空気の疎密変化を作ることを意識して、それを「水」という物質の、動きの揺らぎやうごめき、水面にひろがる波紋と重ねあわせて表現している。
また、この作品のもう一つの大きな特徴は、生演奏の楽器の音に加え、電子的に再編成されたスピーカーから出る音と、映像を含んで作られているということである。近年、音楽というのは楽器による表現に限らず、テクノロジーによりさまざまな新しい音表現が生まれてきている。また、私たちは世界を、音だけではなく、さまざまな感覚を通して享受している。今回は楽器の音色に加え、電子的な音表現と視覚的なイメージの融合により生まれる、新たな風景や感覚を表現できないかと思い、このような表現に挑戦した。3つの要素に主従関係がなく、3つを合わせることで初めて表現されるものを目指している。音響は、ほぼすべて水の音を素材として作られており、楽器の音では表現できないリアルな水の質感や、独特の響きを表すことを目指した。映像は、水の動きの表象的なイメージを表現し、水のさまざまな表情を視覚的に提示する。この3つの要素が重なりあって生まれてくる新たなハーモニーを構築することを目指している。
映像制作: 梶村昌世
(トーキョーワンダーサイト×N響「NEW PIONEERS―次世代の開拓者たち」公演パンフレットより)