タゴール暎美

レジデンス・プログラム

キュレーター招聘プログラム

更新日:2025.9.9

タゴール暎美

参加プログラム キュレーター招聘プログラム
活動拠点サンフランシスコ、ニューヨーク
滞在都市/滞在先東京
滞在期間2025年9月 - 2025年10月
滞在目的

私の博士論文『危機と集合性:現代環太平洋アートの地図作成』では、太平洋におけるアメリカと日本の帝国主義の相互関係を探求するアーティストたちを取り上げている。今回のレジデンシーでは、このプロジェクトをさらに発展させるために、リサーチと執筆を行う予定である。 特に、日本の現代アーティストたちの実践において形成されつつある、代替的な集合性の概念について調査し、「新たな帰属のかたち」に関する章を補完することになるだろう。また、日本人のハワイ移民の歴史についても調査を進める予定だ。 本プロジェクトの目的は、国民国家に基づくアイデンティティの枠組みから離れ、環太平洋の状況や歴史を反映した、より非伝統的な帰属のあり方を明らかにすることにあるだろう。

滞在中の活動

・関東地方を拠点とするアーティスト・コレクティブやデュオへのスタジオ訪問およびインタビューを行い、彼らの共同制作の起源や  
 志向について学ぶ
・広島を訪れ、アーティスト・コレクティブであるYellow River Collegeへのインタビューを実施し、その活動を観察する
・山口県の「ハワイ移民資料館」および広島にある関連アーカイブにて、日本からハワイへの移民に関する調査を行う
・東京で開催される展覧会やパフォーマンスに足を運び、新たな共同性のかたちを記録する
・新たな帰属意識のかたちをテーマとした章に焦点を当てて、論文執筆に時間を充てる

滞在中に行ったリサーチ及び制作活動

TOKASでのレジデンスは、キュレーション実践と博士論文研究のいくつかの領域に取り組むための、生産的な機会となった。東京で過ごしたこの集中した時間は、「太平洋」とその歴史に対してそれぞれ異なる視点やつながりをもつアーティスト、キュレーター、その他のクリエイティブとの(しばしば予期せぬ)一連の対話を通じて、論文の章構成を明確にし、固める助けとなった。この5週間のあいだ、主に戦争の記憶、移民、そして共同性のかたちに関わる展覧会や実践に焦点を当てて取り組んだ。また、広島の「仁保島村ハワイ移民史料館」と山口の「ハワイ移民資料館」で日本からハワイへの移住に関する調査を行い、この調査は日系アーティストとの今後の協働に影響を与えるものとなる。レジデンスを通じてネットワークを広げ、これまで協働したアーティストたちとも再びつながり、その実践の新たな方向性について知見を得られたことをありがたく思っている。 

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仁保島村ハワイ移民史料館に展示されている品々、2025年10月

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Yellow River Collegeとの現地視察、2025年10月

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山本浩貴とのメンタリングセッション

滞在の成果

このレジデンシーは、まさに私の研究にとって最適なタイミングで訪れた。研究の中心にある多くの作品が展示されており、これまでオンラインで見たり文章で読んだりするだけだった作品にもようやく出会うことができた。実物を見ることで、作品のマテリアリティやスケール、空間性に意識が向き、これらの要素は今後の文章表現にも必然的に影響を及ぼすだろう。初めてのインスティテューショナルなレジデンシーだったTOKASでは、アートのエコシステムがどのように形成されるのかを実感した。日々の仕事のペース、ひとつの紹介が次につながっていくこと、口コミの情報がネットワークの動きを形づくっていくこと——こうした感覚を得られたのは大きい。それは地に足がつきながらもどこか不安定で、共同性についての私の研究を、その共同性に実際に頼りながら行っているような、そんな感覚でもあった。 日本からの移住について文脈的な知識を得たことで、ディアスポラ経験を考える新たな道筋が開け、日系や太平洋地域ディアスポラのアーティストとの今後の協働にも可能性が広がった。唯一の心残りは、3ヶ月の全期間を滞在できなかったことだ。

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ロバート・アンドリューによる「What Lies Within」(2025)のインスタレーションビュー、愛知トリエンナーレ2025

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OLTAによるパフォーマンス「Eternal Labor」の舞台美術、愛知トリエンナーレ2025

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キュレーターズトーク Vol. 8

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