間庭裕基

レジデンス・プログラム

国内若手クリエーター滞在プログラム

更新日:2024.3.26

間庭 裕基

参加プログラム 国内若手クリエーター滞在プログラム
活動拠点東京
滞在都市/滞在先東京
滞在期間2023年9月 - 2023年11月
滞在目的

本プログラムでは「公共性」をテーマとし、東京における一定の人々の間に形成される言説空間である「公共圏」と、不特定多数の人々によって織り成される言説空間である「公共的空間」のリサーチ及び作品制作に取り組む。2021年コロナによる分断の中押し進められた国家事業の開催にともない、公共空間に対する政治的介入が随所で見られた。イベントが終わり時間が経過したいま、残された痕跡を手掛かりに現状の公共性を問い直してみる。

滞在中の活動
  • 現在の東京における「公共圏」と「公共的空間」のリサーチ(写真・映像で随時記録)、そこからマップを制作し、具体的にどのような区分がなされているか検証する。 
  • 内と外をつなぐ機能が曖昧な建築空間「ロッジア」的実践が実際に行われている場所のリサーチ(写真・映像で随時記録)、可能であれば制作者に取材を行う
  • 上記のリサーチを経て、公共空間をカメラ・オブスクラと見立てた時どのようなイメージが仮想されるか。物理的に残されてきた痕跡の持つ時間を手がかりに作品制作を行う。
滞在中に行ったリサーチ及び制作活動

私的空間と公共空間の境界を探るため、室内と都市の間に位置するロッジアという機能が曖昧な建築空間のリサーチに着手したが、東京には建築物としてのロッジアが少ないことから「オルタナティブ・ロッジア」の探索へと目的を切り替えた。その過程で、機能が休止し宙吊りとなった空間「リミナルスペース」、行政と個人が路上に設置した植物「街路樹と路上園芸」をオルタナティブ・ロッジアに位置づけた。11月のオープンスタジオでは、スタジオの内と外を跨いだピクニック・インスタレーション、滞在中に撮影したスナップ写真と執筆したエッセイを掛け合わせた映像作品、街路樹の落ち葉をレンズにピンホールカメラで公共空間を撮影した写真作品を展示した。

オープンスタジオの記録写真

オープンスタジオの記録写真

オープンスタジオの記録写真

オープンスタジオの記録写真

作品の画像 2023年、ゼラチンシルバープリント、各203×254mm

滞在の成果

滞在の前半、ロッジア的空間を導入したケア施設をいくつか訪問したことで、ロッジアのもつ空間性を実際に体感することができ、それがオルタナティブ・ロッジアを探す上で大きな指針となった。
レジデンスのある墨田区立川周辺は、グリッド状に整理された人工性の高い街並みのため、街路樹が計画的に植えられた植物だということがより明らかになっていた。それと、道幅が広いせいか路上園芸が多く見られた。これらが身近な風景としてあったことは「街路樹と路上園芸」がオルタナティブ・ロッジアであるという確信を得る助けになったと思われる。中でも、滞在当初レジデンスのスタッフの方に教えていただいた森下駅A5番出口付近にある、路上園芸に囲まれた桜の街路樹のあるスポットはまさにロッジアのような佇まいで強く興味を惹かれた。森下駅に行く際は必ず寄るようにしていた。最終的にはこの場に、街路樹の落ち葉をレンズにした自作のピンホールカメラを設置して写真作品を制作し、それをオープン・スタジオで展示した。
10月にTOKASレジデンシー協力のもと街路樹の専門家の方にインタビューをすることができた。街路樹の選定は主に行政の意図、地域住民の声、専門家の見解によって決められるが、その過程や内実を伺うことができた。都市の緑地やオープンスペースを見る際の解像度が以前より高くなり、映像作品で使用したエッセイの執筆を進めてくれた。
今後の展開だが、街路樹と路上園芸のリサーチは継続し、並行して新たなオルタナティブ・ロッジアの探索、オープンスタジオで展示したピクニックインスタレーションの発展、新たな映像作品の制作に取り組む次第。
滞在中は、同時期に滞在していたキュレーターの2人とのメンタリングセッションや、スタジオビジットのゲストからリサーチと制作に関するアドバイスをいただいたほか、自らの活動をプレゼンテーションする場が何度かあったため、その度に人に伝わりやすい表現と構成を考える機会と訓練の時間を設けられたこと、そしてその際に、周りの方々に助けていただいたことが大きく印象に残っている。

An Essay about Alternative Loggia》 2023年、シングルチャンネルビデオ、16分42秒

クリエーター情報

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