【TOKAS本郷】OPEN SITE 8 実施企画決定

あらゆる表現活動が集まるプラットフォームの構築を目指し、2016年より始まったトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の企画公募プログラム「OPEN SITE」の2023年度実施企画が決定しました。
2023年2月から3月にかけて実施した公募では215企画が集まり、書類審査と面接審査を経て展示部門4企画、パフォーマンス部門3企画、dot部門2企画を選出しました。さらにTOKAS推奨プログラムを加えた全10企画を、2023年11月から2024年2月まで2会期にわたり開催します。 

実施企画

展示部門

開館時間:11:00-19:00。入場無料。
各会期初日には公募審査員をゲストに迎え、オープニング・トークを実施します。

Part 1|2023年11月25日(土)~12月24日(日)

企画者 佐藤瞭太郎
企画名 「変形する無機物」
主にゲームや映像制作におけるエキストラやモブキャラクターとしてインターネット上で取引される素材データ「アセット」を、実存する生として捉え撮影し、現代のインターネットにおける「変形譚」を立ち上げる。

企画者 Arts Collective(代表:アンドレ・チャン)
企画名 「Time Flies Over Us But Leaves Its Shadow Behind」
台湾、シンガポール、香港出身の5名のアーティストたちによる、アジア各地のさまざまな場所に焦点を当てた「時間」を媒介とする映像作品の展示。映像における空間と時間の関係性を探り、拡張されていく時間の感覚について考察する。

Part 2|2024年1月13日(土)~2月11日(日・祝)

企画者 野村 在
企画名 「Can't Remember I Forgot You忘れたことすら、覚えていない」
AIによって今後人類の生存データは永遠にリサイクルされ続け、死後もデータが 生き続けることで、私たちは忘れたことも、忘れられたことも、思い出せなくなっていく。失われた記憶を実体として表出させ、記憶と記録の境界線を曖昧にすると共に、データ時代における存在、記憶、死の在り方を問う。

企画者 すずえり
企画名 「移動について」
2022年後半から2023年前半にかけて行われた5ヶ国への滞在と、それに伴うリサーチをもとに、ポスト・コロナ時代における移動の自由について考察する。ニューヨーク湾の検疫島や、台湾道教における日本人神廟を巡る幽霊譚、各国の渡り鳥の軌跡をベースに、古典的な通信技術を転用しながら不可視の存在を呼び起こす。

パフォーマンス部門

会期中、特定の日時に上演します。鑑賞には事前予約と入場料が必要です。
実施日程や入場料金、予約方法等の詳細は、後日TOKASのウェブサイトおよびチラシにて発表します。

Part 1|2023年12月5日(火)~12月10日(日)
企画者 ルサンチカ(代表:河井 朗)
企画名 「SO LONG GOODBYE」
これまで不特定多数に行なってきた「仕事」についてのインタビューをもとにした舞台作品。ダンサーの斉藤綾子が出演し、踊りが「仕事」である彼女にとって、どこからが公の踊りで、どこからが自分のための踊りなのか、「仕事」と自身の「存在」の境界について探求し、自分の「存在」を規定することを試みる。

Part 2|2024年1月16日(火)~1月21日(日)
企画者 Yanai Shino
企画名 「I Hear Your Breath」
歴史的に関連する道を探し(近年はロックダウン中のカナル沿い、エリザベス女王のためにテムズ川沿いにできた行列)、その道筋を走りながらフィールドレコーディングした音源と声を使い、さまざまな時間、記憶、場所を重ねていく即興パフォーマンス。また地図上でドローイングを作り、ドローイングとパフォーマンスの関係も考える。

Part 2|2024年1月30日(火)~2月4日(日)
企画者 花形 槙
企画名 「A Garden of Prosthesis」
人間を中心とした世界を反転させ、他物のためにある人間の肉体についての可能性を考えるパフォーマンス。人間の肉体と人工物や自然物を「接木」によって接合させ、この社会における定義から逸脱したキメラの生成を試み、互いと互いがプロテーゼとして等価に混じり合い存在する「庭」を制作する。

dot部門

会期中、特定の日時に開催します。入場無料。
実施日程は後日TOKASのウェブサイトおよびチラシにて発表します。

Part 1|2023年11月28日(火)~12月3日(日)
企画者 闘う糸の会(代表:岩間香純)
企画名 「闘う糸の会 わたしたちのJUSTICIA」
ラテンアメリカと日本のフェミニズムを繋ぎ、ラテンアメリカのアートを通じて、双方の歴史、文化、哲学にもとづく多様な視点やノウハウを持ち寄り、新しい価値観や経験を共有し合いながら、アートをとおしてジェンダー暴力に抵抗する方法について対話する場をつくる。

Part 2|2024年2月6日(火)~2月11日(日・祝)
企画者 6steps(代表:木村玲奈)
企画名 「6stepsを置いてみる -TOKAS本郷編-」
6段の階段を空間に配置し、来場者に6stepsというダンス(振付)に挑戦してもらう状況をつくることで、ダンスの間口を広げ、社会におけるダンス作品の在り方を模索する。

TOKAS推奨プログラム

公募企画に加え、TOKAS企画によるプログラムを開催します。入場無料。
実施日程は後日TOKASのウェブサイトおよびチラシにて発表します。  

Part 1|2023年12月14日(木)~2023年12月24日(日)

企画者 ツァン・ツイシャン
企画名 「Chroma 11」
香港の映像作家ツァン・ツイシャンと香港アーツセンターifvaとの協働によるVRプロジェクト。インスタレーションと映像、仮想空間を融合し、2人のダンサーの愛の物語を描く。生と死、ホモセクシャリティ、LGBTQIA+、病と孤独、といった哲学的かつ現実的なテーマを提示する。

募集概要

募集期間
2023年2月28日(火)~3月30日(木)
応募総数
215企画
審査員岸本佳子(BUoY 芸術監督)
小林晴夫(blanClass ディレクター)
畠中 実 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)
近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)

審査員による総評

岸本佳子(BUoY 芸術監督)

OPEN SITEという比較的小さなプラットフォームにとても収まりきらない質量と数の企画群が目の前にどん、と積まれ、選考の初期段階から眩暈がしていました。書類の段階では眩暈だったのですが、面接の場面になるとそれぞれの企画が持つ社会的な広がりの射程がよりクリアに、視界がサアっと開けていく感覚に変わりました。「個」としての興味を深く、深く潜り、同時に自己から離れ他なるものへの手触りを自らの存在を賭けて希求する、パンデミック以降の世界を自他の尊厳のもとに生き延びる意思に満ちた作品がこれほど一同に会する機会はそうそうないのではないかと思います。審査の段階では作品がまだ生まれていない訳なのですが、これから生まれ出づる各々の闘いと抵抗の結果としての「作品」が観客とどのような出会いを果たすのか、期待とワクワクが今から正直、止まりません。


小林晴夫(blanClassディレクター)

OPEN SITEの審査は今年で4回目、ここ数年の傾向と大きく異なるのは、海外を含めたいろいろな地域を拠点にするアーティストが多く応募してきたことだろうか? そのせいでまたリモート中心の面接に逆戻りだったのだが、特にその二次審査では誰が通ってもおかしくない企画が揃い、今回の選考もそう簡単ではなかった。それぞれの地域で、それぞれの立ち位置で、例えばコロナ禍にひとりで獲得した方法や考え方をベースに、アーティストたち、企画者たちがあくまでも個人として獲得したものがここにきて開かれる、あるいは、ものも、ことも、言葉も、記憶も、人間と等価に置いて結び直すような表現が全体を通じて印象に残った。結果的に決まった企画は安定感のあるラインナップに収まったように思う。個人的にはもう少し結果がわからない未分化なものを期待してしまうところもあるので、実際の発表では、良い意味で予想を裏切るような表現を期待している。


畠中 実 (NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)

今回の審査における大きな特徴は、海外からの応募が増えた(というか、コロナ以前に戻りつつあることの兆しが見えた)ということだろう。採択結果にはあまり反映されなかったとはいえ、今後また各部門での応募と採択の増加が期待される。レジデンシー・プログラムも持つ東京都の国際的な交流施設でもあることは、TOKASの特色のひとつとして、もっとアピールされてよい要素であるし、全世界的に起こったパンデミック後の影響がそれぞれの状況下でどのように表現や展覧会に表出されているのかを知る機会になるだろうから。もちろんパンデミックをはじめとする社会的要因を反映した表現である必要はかならずしもないし、そこに優劣があるわけでもない。しかし、少なくとも、なぜ自分はそうした表現をしているのかが参加者においても意識されるべきではあるだろう。採択結果はそれを反映してもいるように思う。ある意志を誰とも違う形で実現し、人に伝えようとする。アートとはそういう営みであると思うから。


近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)

企画公募といえども「実験的な取り組みを支援する」OPEN SITEでは、審査の段階で不確定要素が多い企画も少なくない。企画が通っていない段階で細部を詰めることができないとか、未制作の作品を発表しようとしているからとか、実験的、挑戦的なことをしようとしているがゆえにまだ決めかねている部分が多いとか、いろいろ理由はあるだろう。だがその不確定要素が、コンセプト/アイデアの未消化と見える場合もあれば、可能性の豊かな泉に見える場合もある。実践の道筋にある新たな試みに飛躍の可能性を感じ、作品の展開と展望に対する明晰さや内的必然性を作家から受け取ることができれば、その期待値は大いに高まる。選出された企画は、総じてこのまだ見ぬ完成形への期待値が高かったように思う。

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