Oコレクションによる空想美術館 第7室

その他のプログラム

Oコレクションによる空想美術館 第7室

榎倉・松原の部屋-オルタナ(ポスト)モダン1

エキジビジョン

榎倉冴香≪夕立の予感≫ 2008 キャンバスに油彩

開催情報

タイトルOコレクションによる空想美術館 第7室 榎倉・松原の部屋-オルタナ(ポスト)モダン1 
会 期2009年6月6日(土) - 2009年7月26日(日)
時 間11:00 - 19:00
入場料無料
主 催東京都歴史文化財団 トーキョーワンダーサイト
主 催岡田聡(アートアセファル代表)
会 場トーキョーワンダーサイト本郷
アーティスト榎倉冴香、松原壮志朗

本展会場内では、 岡田氏のコレクション・Francesco Clemente≪Alba Pura≫(1981)と、 Clementeの作品をもとに同じサイズ、同じモチーフで制作された 榎倉・松原の作品がご覧頂けます。


同時開催

TEAM15 「Hello! MIHOKANNO」   
会場:トーキョーワンダーサイト渋谷   
会期:6月6日(土)~7月20日(日)   
榎倉冴香と松原壮志朗が展示に参加しています!

オルタナ(ポスト)モダンという妄想

私たちが生活しているこの社会には様々な表現が溢れています。そして、その表現されたものには多かれ少なかれ社会の姿が投影されているはずです。またそれは単に一方向的な関係だけではなく逆の関係も、すなわち社会そのものに表現されたものが投影されていくという双方向の関係にあるとも考えられないでしょうか?とりわけ芸術と言われている表現のなかで、優れたポテンシャルを持つものであればあるほど社会への影響力は大きく、ただ単に社会の姿を映し出すだけにとどまらず、時間や空間を超えて社会を予見したり、時に変革したり創りあげていくことさえもあると思うのです。

私は初めて彼らの作品を観た時に突如として、「人類は今私たちが生きているこの社会とは異なるもう一つ別の社会を構築することができたのではないか」、そんな妄想が頭に浮かび上がったのでした。

その社会は、近代のある時期まで私たちと同じ歴史を歩んだにもかかわらずある時点から袂を分ち、私たちの社会が持つ価値観とは別の価値観を構築しつつ違う方向に進んでいきました。その社会では今日私たちが生活している社会のような地域社会の空洞化がなく、各個人が信頼をよせることができるさまざまな中規模の共同体が機能していて、私たちが互いに拠り所となる共通の物語を共有することによってニヒリズムに陥ることなく活き活きと生活していくことが可能な社会といったイメージです。私はその社会のことを「可能性としてのもう一つの(ポスト)モダンの社会」という意味で、オルタナティブ(ポスト)モダン=オルタナ(ポスト)モダンと勝手に名付けてみました。

今私たちが生きている現実社会は底が抜け落ちたような社会であり、社会の本来もつべき包摂性がなくなってしまいました。こんな社会自体にたいして、もはやまともに信頼をよせる人は余程鈍感な人でもない限りいないでしょう。それでも脱社会的に生きるわけにもいかず(実際は脱社会的に生きていく人はどんどん増えていますが)、したがってシニカルに社会を眺めつつ生活せざるを得ません。拠り所となる共同体(共有できる物語)が無いことがわかっているにもかかわらず、自己承認を担保してくれる物語をもとめて再帰的な無限運動を繰り返し、ひたすら自己消耗して暮らしているわけです。各自が各自の所属する島宇宙(個人間で共有できない小さな物語)のなかで分断共存させられている。島宇宙同士の相互交感はなく、コミュニケーションは戦いとしてしか有り得ない社会。私たちは予めこの状況を乗り越えることの不可能性を了解しつつ、その方法の模索を絶えず強いられている、そんな時代を偶発的にも生きていかなければならないわけです。

その模索、とりわけ芸術的模索の営為として彼らの作品は、私にとって非常に魅力的に映ったのでした。それは彼らの創りあげた作品が共通して持つおおらかさや暖かさや優しさなど、人間味としか言いようのない具体的なディテールの数々が、観る側の私の頭のなかでブリコラージュされ、ある種の幻惑を伴ってオルタナ(ポスト)モダンの観念をよりリアルで具体的なイメージとしてありありと立ち上がらせたのです。そしてそんな社会の構築可能性をも白昼夢のように感じさせてくれたのでした。こんな妄想を、見る側の内部に一瞬にして創りあげてしまう彼らの作品の感染力のなかに、今後の社会を変えていく可能性を見出してしまうのは、あまりに短絡的で楽観的に過ぎるでしょうか。その答えは、この展覧会で彼らの創造した作品を観られた方々同士で、オルタナ(ポスト)モダンの社会という物語を共有できるかどうかにかかっているように思えるのです。

アートアセファル代表 岡田 聡



松原 壮志朗 「ダークフェアでのインスタレーション風景」2008

会場風景








参加クリエーター

榎倉冴香
松原壮志朗

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