夏のこどもワークショップ

トークやワークショップをとおしてアートのもつ複雑な豊かさを楽しく共有することを目指す普及プログラム「つなぐTOKAS」。2025年の「夏のこどもワークショップ」では、アーティストの對木裕里を講師に迎え、彫刻についてのワークショップを行います。
みなさんは、「彫刻をつくる」ということにどのようなイメージを持っていますか?
このワークショップでは、石膏という素材を会場の裏手にある川に浸けて「なんにもしない」で作品をつくってみます。なんにもしないからこそできるかたち、心に浮かぶことをじっくり眺めてみましょう。
※天候によりプログラム内容が変更になる場合があります。
| タイトル | 夏のこどもワークショップ「積極的空白 なんにもしないをかたちにする」 |
|---|---|
| 開催日 | 2025年8月2日(土)、8月3日(日)10:00 - 12:30 ※途中入退出不可 |
| 講師 | 對木裕里 |
| 会場 | トーキョーアーツアンドスペースレジデンシー |
| 対象 | 小学3年生以上(大人も歓迎)※小学生は保護者が付き添いのうえご参加ください。 |
| 定員 | 各回10名程度(事前予約制・抽選) ※抽選結果は7月9日(水)頃までにお知らせします。 |
| 参加費 | 無料 |
| 持ち物 | タオル、作品を持ち帰る袋 ※汚れてもよい服でお越しください。 ※30分程度屋外での作業があります。熱中症対策として帽子や飲み物をお持ちください。 |
| 申込期間 | 2025年6月19日(木)~7月2日(水) |
| 申込方法 | 予約フォームに必要事項を入力のうえお申込みください。 ※予約受付後すぐに、予約確認メール(自動返信)を配信しますので、下記 E-mailの受信設定をお願いいたします。24時間以上過ぎても確認メールが来ない場合は、お手数ですが下記のアドレスまでご連絡ください。 |
| 問合せ | トーキョーアーツアンドスペースオフィス
TEL: 03-5245-1142 ※平日のみ(10:00–18:00) Email:workshop2025(at)tokyoartsandspace.jp ※ (at)を@に代えてください。 ※ワークショップ当日は会場(03-5625-4433)までお問合わせください。 |
| 主催 | トーキョーアーツアンドスペース(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館) |
| 後援 | 墨田区 |
イントロダクション
今回のテーマである「なんにもしない」をキーワードにプレゼンテーションを行いました。
對木さんは「旅」を、時間をかけて同じ場所に戻ってくる「なんにもしない」ことのひとつとしてとらえ、このようにある種の労力をかけてつくりあげられた「なんにもしない」時間や空間を「積極的空白」と呼んでいることを紹介。用途や役割をもたないものをわざわざつくることで、隠れた意味や目には見えない思考や記憶、そしてそれをとりまく動作を浮かび上がらせる自身の彫刻作品にも、この「積極的空白」の要素が見られることについて、作品画像を見せながら説明しました。 また、彫刻をつくる過程で生まれる物理的な「空白」である型についても触れ、今回はその型に会場の裏手を流れる竪川を使用し、「なんにもしない」で制作を行うことを提案しました。



制作
石膏に初めてふれる参加者も多かったため、撹拌から20分程で硬化し始める特性なども紹介しながら、粉末状の石膏に水を入れて泡だて器で撹拌させ、液体状になった石膏をビニール袋にいれました。その後、石膏が入ったビニールに、釣り竿として使用する木の棒にとおした紐を入れて外側から留め、このビニール袋を釣り下げられる構造にしました。
釣り竿が完成すると会場の裏手に行き、石膏が入ったビニール袋を竪川に浸けました。上下や左右に釣り竿を動かしたり引き揚げて様子を見たり、じっと佇んだりしながら、参加者はそれぞれの「なんにもしない」時間を過ごしました。竪川に浸け始めてから10分程度で引き揚げると、石膏はほとんど硬化していました。






展示・発表
会場に戻りビニール袋から石膏を出し、硬化の化学反応による熱を感じながら刷毛で破片や粉を取り除きました。
次に、「『なんにもしない』と聞いて、どんなことを想像したか」、「石膏を河に入れている時に考えたこと」、「作品にどのようなタイトルをつけるか」など、ワークシートに記入しながら、今回のワークショップをとおして考えたことを振り返りました。
その後、会場のスタジオ内で参加者自身による石膏の展示を行いました。天井から吊るされたいくつかのフックから、参加者は好きな場所を選び、高さを調整しながらインスタレーション作品として石膏を展示しました。
展示が完成すると、参加者は一人ずつ自分の作品を見せながら、ワークシートを参考に制作中に考えたこと、作品への思い、なぜその高さで展示したかなどについて発表しました。今回はビニール袋に入れて硬化させるという制作方法のため、出来上がった石膏の外見に大きな違いは見られませんでしたが、参加者はそれぞれその形を何かに見立てたり、川に石膏を浸けている時に心に浮かんだイメージを投影していることが、発表から伝わりました。



まとめ
對木さんは最後に、今回は自分の手で何かをかたちづくるのではなく、待っているだけの「なんにもしない」時間に作品が出来上がったこと、そしてその時間のためには多くの過程や準備があったことについて触れました。
作品制作とは単になにかを生産するのではなく、自分の心の中に浮かぶ記憶や感情を見つめることや、偶然できた形状に何かを見出すこと、そして空間との関係性を考慮しながら展示するといった、さまざまな工程を経て完成するということを体感するプログラムとなりました。